レスリング、パワハラ騒動から4年…小中学生レスラーが熱戦も「栄和人杯」が注目されない理由

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 あの男が輝いていた。かつて吉田沙保里さん(五輪3連覇)を肩車してマットの上を走った、オリンピックの舞台ではない。9月18日に名古屋市の愛知県武道館で開かれた第1回の「栄和人杯 集まれ! 未来のメダリスト」での栄和人氏(62)である。【粟野仁雄/ジャーナリスト】

母親同士の試合

「栄和人杯」は愛知県教育・スポーツ振興財団が主催する小中学生レスラーを対象にした個人戦。東京、神奈川、三重、岐阜、奈良、滋賀、和歌山、香川から選手が集まり、熱戦を繰り広げた。中学生は男女別だが、小学生は2学年ごとに分けた男女混合。小学生では女子の体格が男子を上回ったりもするので、女子にフォールされて「泣きべそ」をかく男子もいた。

 面白かったのは母親同士の試合だ。セコンドには子供が待ち受ける。ピリオドの合間の30秒のインターバルもへばって座り込み、子供に水をもらう姿も見られた。

 決勝をフォール勝ちして優勝したのは伊藤智尋さん(至学館レスリングクラブ)。レスリングの試合に出たのは初めてだそうだが、そうは思えない強さだ。愛娘の愛里さん(中3)と新菜ちゃん(小6)がセコンドにつき母親をサポートした。

「栄さんが武道館でレスリング教室をやっていることを知って、『吉田沙保里さんのようになりたい』と新菜がやり出したのですが、愛里も栄さんに誘われて始めました。見ているだけでは面白くなくて、私もマット運動から始め、今は子供たちとスパーリングもしています」(伊藤さん)

 それにしては強すぎる。通りかかった栄氏が「俺が教えてるんだよ。強いよ」と笑った。

 準優勝の軒端久恵さんは、他のママさん選手がTシャツ姿で戦う中、レスリングのユニフォームを着て登場。気合十分だったが、かつてレスリング選手だったわけではないそうだ。

「息子2人が常滑レスリングクラブに通い出して、私がレスリングのことに口を出すと、『そんなに言うならママやってみればいいじゃん』と言われたんです。『それならやってやる』とばかり始めたんですよ。子供はやらなくなったのに、私がレスリングにはまりました」(軒端さん)

 なんと、軒端さんは講習を受けて審判資格まで取ったそうだ。この日も自分の試合が終わるとすぐに、子供たちの試合の審判に走っていった。

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