レスリング、パワハラ騒動から4年…小中学生レスラーが熱戦も「栄和人杯」が注目されない理由

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「俺なんか蚊帳の外」

 栄氏は計14個の金メダルを日本にもたらした。8人の金メダリストたちを、子供の頃だけではなく、最低、大学卒業まで指導した。これだけの実績を上げたスポーツ指導者は他競技にも存在しないだろう。

 名伯楽の名を冠した記念すべき1回目の大会時には、セルビアでレスリングの世界選手権が開かれていた。栄氏に「行かないんですか?」と聞くと、「もう俺なんか蚊帳の外だよ」と話すものの、その表情は子供たちに囲まれて生き生きとしていた。

 まだ各国のトップ級が出揃ってはいないが、世界選手権で女子は東京五輪金メダルの須﨑優衣(キッツ)、尾崎野乃香(慶応大)ら5人が優勝、男子は東京五輪を逃した樋口黎(ミキハウス)、ドーピング問題で苦しんだ成國大志(MTX GOLDKIDS)が優勝した。成國の母・晶子さん(旧姓・飯島)は、かつて栄氏が指導し、90年、91年の世界選手権で連覇した強豪。彼女が豪快な首投げで優勝を決めた世界選手権を取材したことがある。

 女子レスリングは、かつての至学館大学の一強ではなくなった。世界選手権の優勝者も同大学出身者は志土地(旧姓・向田)真優(ジェイテクト)だけだった。6月の明治杯(全日本選抜選手権)後、至学館勢が一強の輝きを失ったことを問われた日本レスリング協会の富山英明会長(ロサンゼルス五輪金メダリスト)は「分散はいいことですよ」と語っていた。栄氏は「勝負はこれからですよ」と満を持している。

 表彰式で子供たちにメダルをかけ、賞状を渡すなど忙しい栄氏に子供たちが集まってきて、サインをせがんでいた。やはり人気者だ。だが、盛り上がった第1回「栄和人杯」も筆者以外、報道関係者がいなかった。

 ある協会関係者は「せっかく大会の1回目なのに、栄氏自身が広報をしたがらなかったようです。目立つことをしたらまた叩かれると恐れたのでしょう」と推測する。「パワハラ騒動」以降、栄氏のマスコミへの恐怖感は消えていないようだ。
(一部、敬称略)

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