ファンの感動を呼んだ! 引退試合で“最後の最後”に輝いた名選手列伝

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“必死のパッチ”

 引退発表直後の試合で、打席に立っていただけなのに、思いがけずサヨナラ勝ちを演出するヒーローになったのが、“新・代打の神様”と呼ばれた阪神・関本賢太郎である。

 プロ19年目のシーズンとなった2015年、かつては内野のレギュラーを張り、08年に打率.298、8本塁打、52打点を記録した“本家必死のパッチ”も、6月に左脇腹痛、8月に右背筋痛で2度にわたって登録を抹消されるなど、ケガに泣いた。

 9月8日に1軍復帰後は、10打数6安打3打点と持ち前の勝負強さが戻ってきたが、優勝を争うチームの大事な時期に2度も戦列を離れたことで肉体の限界を感じ、引退を決意した。「最後に打てなくなって、野球を嫌いになって辞めるのが嫌でした」。まだ実も花もあるうちの男の引き際だった。

 そして、引退発表直後に本拠地・甲子園で行われたDeNA戦、3対3の9回無死一、三塁のチャンスで、「代打・関本」が告げられた。

「正直、打てる気はまったくせんかった」という関本だが、一打サヨナラの場面で、“代打の神様”の顔が大きくモノを言う。

 カウント2-1から三上朋也が投じた4球目を捕手・嶺井博希が後逸。ボールがバックネットを転々とする間に、三塁走者・江越大賀がサヨナラのホームを踏んだ。

 この回の阪神は、先頭の江越が振り逃げで出塁。次打者・俊介も送りバントが落球を呼ぶという連続珍プレーでチャンスを広げており、決勝のパスボールも含めて、まさに関本のためにお膳立てされたかのような“珍サヨナラ劇”だった。

「オレがスーパースターやったら、こういうところで打つんやろけどね。でも、スーパースターじゃないから、こういう結果になった。オレらしくていいわ。ラッキー。必死のパッチです」

 幸運な結果オーライに気を良くした関本は、10月2日のヤクルト戦でも8回に代打同点タイムリーを放ち、チームの3年連続クライマックス・シリーズ進出に大きく貢献した。

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