妻の介護のために90代からジム通い 映画にもなった101歳が語る“読書漬け”の日々

ドクター新潮 国内 社会

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「おっ母のおった時が一番幸せじゃったけど」

〈要支援1。介護サービス利用ゼロ。6時半に起き、裏庭の掃除、ゴミ出し。パンとフルーツ、ヨーグルトなどの朝食を食べて一日が始まる。午前中は新聞4紙をくまなく読む。昼食と夕食は白米を炊き、おかずはなじみの店で買ってくる。肉が好物。かえりいりこ(瀬戸内特産の煮干し)常食。食後に呉名物「海軍さんの珈琲」の豆をひいて飲む。手で洗濯。夜は早寝。週3回、外科クリニック併設の「ジム」に通っている〉

 日常のそんなルーティンを聞き、良則さんの口から、

「おっ母のおった時が一番幸せじゃったけど、まー、今は安気(あんき)(気楽)にしちょりますー」

 との言葉が出た後、「お城」に入らせてもらう。耳が遠いので、直子さんが“通訳”してくれた。

本や新聞に分からない言葉が出てくると広辞苑で

 ――本がお好きなんですね?

「はい。若い頃から修養書なんかをよう読みよりました。わしゃー昔人間ですけんの、本は面白い」

 ――無茶苦茶に積んであるように見えても、どこに何があるか分かるんでしょうね。

「いやー、いやー(笑)」

 ――愛読書を教えてください。

「あなたにとって面白いかどうか分かりまへんが」と前置きの上、大佛次郎の『帰郷』、勝小吉の『夢酔独言』、それに『西郷南洲遺訓』を挙げ、私がメモに手間取っていると、すらすらとノートに書いてくれた。一字も間違えずに。

 床の間に、最新版の『広辞苑』があった。街の中心地の本屋まで手押し車を押して行き、買ってきたそう。本や新聞に分からない言葉が出てきたら、さっと引くという。頭が下がる。

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