渋沢栄一の孫・鮫島純子が語る“百寿”の理由 ウオーキングの方法にコツが

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教師が渋沢栄一の誤った情報を話し…

 自分ではエッセイストになったつもりはなく、今も「作文を投稿している」感覚だとか。

「(女子学習院)高等科の倫理の授業の講師は東大教授でした。どんな生徒が在籍しているかなど頓着なく、『人の欲望は限りがない』の例として『三菱の岩崎や渋沢等、人は財を得ると爵位を欲しがる』と話されました。クラスメートの同情の眼がいっせいに……。授業が終わり『皆で教官室に訂正を求めに行こう』と言ってくださるのを押しとどめ、一人で教官室に行き、『祖父は社会貢献したことを認めていただいた証として爵位はありがたく拝受致しました。私は先生のお話を聞き流せますが、ご高名な先生が各所で同じようにお話しされるのは残念に存じます』と申し上げました。そのことを随筆家の叔父、渋沢秀雄に話すと面白がってくれて、渋沢史料館で出している雑誌に書くよう勧められたのが始まりでした」

オレオレ詐欺に遭ったが、犯人は憎まず

 置かれた環境と暮らしの中から見出した、心豊かに生きる思考法などをエッセイにつづってきた。晩年も70代で水泳、80代で社交ダンス、90代でヨガを始めるなど新しいことにチャレンジし、ネタには事欠かない。87歳でオレオレ詐欺に遭った時、犯人が憎いという思いよりも、暗転するであろう犯人の先の人生や親御さんの心情に心を寄せたとのエッセイの記述に、お人柄がにじむ。

 掃除も洗濯も料理も得意。息子さん方の妻たちが常々手伝ってくれるが、「自分のことは自分でこなす」暮らしが快適とのこと。

「日々結構忙しいのよ。執筆依頼のほか講演、対談なども頼まれるほか、こうしてインタビューもお受けしますし、多忙」

井上理津子(いのうえりつこ)
ノンフィクションライター。1955年奈良市生まれ。京都女子大学短期大学部卒。タウン誌を経てフリーに。人物ルポや町歩き、庶民史をテーマに執筆。著書に『さいごの色街 飛田』『葬送の仕事師たち』『親を送る』『絶滅危惧個人商店』など。

週刊新潮 2022年9月22日号掲載

特別読物「『百寿の奥義』を学びたい 『元気な100歳』は老後をどう過ごしてきたか」より

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