警察庁が敢えて入国させたテロ組織「ヒズボラ」メンバーの危ない行動記録 元公安警察官の証言

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パキスタン人のヤード

 なぜ警察庁は入国を拒否しなかったのか。

「その男がテロを起こす可能性がないと判断したからです。CIAなどの情報から、きちんと家庭を持ちながらビジネスをしているし、パキスタン人と組んで日本でテロを行うという情報もありませんでした。むしろ、警察庁は、男がどこに寄って誰と会うのか。何をするのか知りたかったんです」

 結局、警視庁公安部外事3課の捜査員が男を監視することになった。

「成田空港からずっと尾行したそうです。4、5人でチームを組んで、数チームで尾行、監視を行ったのです。立ち寄り先の県警の外事課にも応援をお願いしたといいます」

 男の立ち寄り先には、予定通りパキスタン人が営む中古車会社のヤードがあった。

「ヤードというのは、四方を高い塀で囲った作業場で、そこで中古車を解体して部品を海外へ輸出するのです。男は、行程表に記載した地域のヤードに立ち寄り、商取引を行っていました」

 外事3課の捜査員は、何かあった時のために、男が立ち寄ったヤードをすべて調査した。

「男が行程表通りに移動し、関空から帰国した。ですが、数年後、彼が立ち寄った中部地方のヤードが盗難車を扱っていたことが発覚、摘発されました。日本の中古車が、ヒズボラの資金源になっていた可能性もあったのです」

勝丸円覚
1990年代半ばに警視庁に入庁。2000年代初めに公安に配属されてから公安・外事畑を歩む。数年間外国の日本大使館にも勤務した経験を持ち数年前に退職。現在はセキュリティコンサルタントとして国内外で活躍中。「元公安警察 勝丸事務所のHP」https://katsumaru-office.tokyo/

デイリー新潮編集部

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