二枚舌外交を極める尹錫悦 米中二股にいら立つバイデンの「お仕置き」のタイミング

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中ロに立ち向かわない韓国

 NYTのSH・チョー支局長も「韓国の本質」を指摘しました。

・Mr. Yoon was careful in the interview to point out that his country’s security partnerships were not aimed at China. “Our defense system is to deal with the North Korean threat, not China or other countries,” he said.

 インタビューで尹氏は韓国の安全保障のパートナーシップが中国を狙ったものではないと慎重に指摘した――つまり、韓国は保守政権になっても中国と立ち向かう覚悟を持たない国である、と断じたのです。さらに、以下のくだりを付け加えることにより、「口では西側のフリをするけどね」と馬鹿にしました。

・On Tuesday at the United Nations General Assembly, he is scheduled to deliver an address in which he is expected to emphasize his country’s commitment to the “rules-based international order,” a mantra frequently repeated by top American diplomats like Secretary of State Antony J. Blinken.

 9月20日、国連総会で彼は演説する予定だ。そこで彼は「ルールをベースにした国際秩序」への韓国の関与を強調するはずだ。それはA・ブリンケン(Antony Blinken)国務長官ら米政府高官が繰り返すお題目と同じなのだが――。

 NYTの「予言」通り、尹錫悦大統領は11分間の国連総会演説(韓国語)で「自由」という単語を21回使い、西側国家であることを強調しました。

 しかし、ウクライナを侵攻したロシアを名指しで非難せず、これまたNYTが予見したように「ルールを破壊する国々」に真正面から立ち向かう姿勢は見せなかったのです。

 朝鮮日報の「尹大統領、国連総会で1時間半前に着席して猛勉強」(9月21日、韓国語版)は「NYTやCNNは生中継で『尹錫悦大統領は国連総会の初舞台で米国、ロシア、ウクライナ、北朝鮮など、どの国家の名前を挙げないなど、非常に慎重な姿勢を見せた』と報じた」と書きました。米メディアは、西側としては異例な演説と見なしたのです。

「米中二股」が限界に

 韓国は朴槿恵(パク・クネ)政権(2013年2月25日―2017年3月10日)以降、米中の間で二股外交を展開してきました。ところが、米中対立が深まって個別の案件で選択を迫られるようになると「米中双方と仲良くします」といった、総論による誤魔化しが効かなくなった。

 結局、米国人の前では米国とスクラムを組むと言い、中国人の前では中国との協力を約束する「二枚舌」を使うしかなくなった。韓国とすればこれが最善の手なのでしょうが、血を流して韓国を守ってきた米国にとっては侮辱そのものです。「お仕置き」して懲らしめてやろうと考えるのが自然です。

――「お仕置き」はいつ発動するのでしょうか。

鈴置:とりあえずは騙しだましやっていくでしょう。3カ国合同演習も、尹錫悦政権は真っ向から拒否していた(「『米国回帰』を掲げながら『従中』を続ける尹錫悦 日米韓の共同軍事訓練を拒否」参照)。

 それを米国は何とか実施に持ち込んだ。圧力の結果でしょう。大統領は実施の事実を否認しましたが。韓国人の多くが米韓同盟に未練を残す以上、「見捨てるぞ」と米国に脅されれば、政府も米国の言うことを聞かざるを得ません。

どちらに転んでも通貨危機

――しかし、THAADやChip4ではまだ、中国の言いなりです。

鈴置:米国は脅しの強度を高めていけばいいのです。例えば今、韓国は通貨危機の恐怖に怯えている(「韓国人がウォンを売り始めた 政府が『通貨危機は来ない』と言うも信用されず」参照)。

 米国に追従して金利を上げれば不動産価格が暴落して金融システムが痛む。一方、金利を上げなければ、金利差が生じて資本逃避が起きる。金利を上げても上げなくても、通貨危機に陥る可能性が高まっている(「不動産バブルがはじけた韓国 通貨売りと連動、複合危機に」参照)。

 そもそも韓国は2019年に生産年齢人口がピークアウトし、不動産バブルが崩壊しやすくなっているのです。1990年代初頭の日本とかなり似ています。この状況に関しては『韓国民主政治の自壊』第4章第3節「ついに縮み始めた韓国経済」で詳述しています。

 結局、金利のジレンマを解消するには米国か日本に通貨スワップを結んで貰い「いつでもドルを手当てできる」とのサインを市場に送るしかない――との認識が韓国には広まっています。

 ところが、日本との関係は最悪で、とても結んで貰えそうにない。そこで韓国各紙は一斉に「NYでの国連総会で韓米首脳会談を開くのだから、J・バイデン(Joe Biden)大統領に通貨スワップを頼めばいい」と言い出しました。

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