夏ドラマ「ベスト3」 黒沢明の作品を彷彿とさせる「石子と羽男」が従来のリーガルドラマと違う点

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「競争の番人」(フジテレビ)主演・坂口健太郎(31)、杏(36)

 公正取引委員会というドラマ界にとって新たな領域を開拓した意欲は大いに買うべきだし、主演以外のレギュラー陣も大倉孝二(48)、小池栄子(41)、加藤清史郎(21)、寺島しのぶ(49)、小日向文世(68)と演技巧者が揃っていたので飽きさせなかった。

 物語にリアリティに欠ける部分があったものの、これは作品側の意図だろう。確信犯に違いない。公取委をそのまま描いたら難解になる上にガチガチに硬くなる。この作品はリアリティを削いだ分、分かりやすかった。

 そのうえ時代劇を思わせる勧善懲悪調だったこともあり、家族で観るのに適していた。「月9」と「日曜劇場」(TBS)はコア視聴者(基本的に13~49歳)ばかりを狙わない貴重なドラマ枠である。

 独居世帯の急増で信頼性が乏しくなったため、もう各局は世帯視聴率を実務に使っていない。代わって標準指標となった個人全体視聴率は一貫して高かった。

「月9」が恋愛路線を捨ててから約5年。「イチケイのカラス」(2021年4月期)など家族向けの成功作を生んできた。「競争の番人」もその1つに数えられる。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。大学時代は放送局の学生AD。1990年のスポーツニッポン新聞社入社後は放送記者クラブに所属し、文化社会部記者と同専門委員として放送界のニュース全般やドラマレビュー、各局関係者や出演者のインタビューを書く。2010年の退社後は毎日新聞出版社「サンデー毎日」の編集次長などを務め、2019年に独立。

デイリー新潮編集部

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