「リブゴルフ」は世界ランキングの対象になれるのか 創設者ノーマンの悲運を振り返る

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「リブ」の意味

 2008年の全英オープンには、その3週間前に結婚したばかりのテニス界の女王クリス・エバート(67)を伴って登場。

「ハネムーンの仕上げのつもりで、ここへ来た」

 そんな気負いの無さが功を奏したのか、ノーマンは54ホールを単独首位で終え、53歳にして3度目の全英オープン制覇に迫った。今度こそ勝ってほしい、勝たせてあげたいと、あのとき私は心底、願った。しかし、最終日のノーマンは1番ティ後方のギャラリースタンドから聞こえてきた小さな物音に腹を立て、ギャラリーを睨みつけた。そうやって激しい形相でティオフしていったノーマンのゴルフは「予想通り」振るわず、72ホールを終えたとき、彼は3位になっていた。

 余談ながら、エバートとは2年後に離婚。輝くノーマンを目にすることはもうないのだと思っていたら、昨年から今年にかけて、彼は突如、リブゴルフを掲げ、表舞台に再び登場した。

 リブゴルフの「LIV」はローマ数字では「54」を意味する。「サタデー・スラム」は、言い換えれば「54ホール・スラム」。ノーマンにとって「54」は輝きを意味する大好きな数字なのだろう。そんなラッキー・ナンバーを付したリブゴルフだからこそ、そもそもノーマンらのために創設された世界ランキングの対象ツアーとして承認されるのではないかと思いたい。

 だが、その一方で、最後の最後に報われないことが多いノーマンだからこそ、今回も待ちに待った挙句、悲願の世界ランキングを掴み取ることができないようにも感じられ、彼の皮肉な運命はどこまで続くのだろうかと、今は少々心配している。

舩越園子(ふなこし・そのこ)
ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学客員教授。東京都出身。早稲田大学政治経済学部経済学科卒。1993年に渡米し、在米ゴルフジャーナリストとして25年間、現地で取材を続けてきた。2019年から拠点を日本へ移し、執筆活動のほか、講演やTV・ラジオにも活躍の場を広げている。『王者たちの素顔』(実業之日本社)、『ゴルフの森』(楓書店)、『才能は有限努力は無限 松山英樹の朴訥力』(東邦出版)など著書訳書多数。1995年以来のタイガー・ウッズ取材の集大成となる最新刊『TIGER WORDS タイガー・ウッズ 復活の言霊』(徳間書店)が好評発売中。

デイリー新潮編集部

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