“毒親の呪縛に対する絶望が裏テーマ”の「純愛ディソナンス」 飽きさせない展開が意外と面白い

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 今期「唯我独尊の横暴おじさん」役が数名いたので、まとめようと思ったが、うちひとりがガチだったと判明したので書くのをやめた。

 ということで、「ディソナンスって?」と調べるところから始まったのが「純愛ディソナンス」。女子高生と教師の禁断の恋を美しく爽やかに描くんだろうなあ、なんてのんきに観ていたら、意外と面白くてねぇ。

 純粋で頑張り屋の女子高生(吉川愛)と、人間不信で斜に構えているが、対外的には温厚を装う教師(中島裕翔)。ふたりが引かれ合ったのは、厄介な親という共通点から。親の支配と束縛、過干渉に苦しめられている。

 1・2話は学園純愛サスペンス風味。吉川が慕う教師(筧美和子)が行方不明に。先輩教師(眞島秀和)が不倫の後始末のため殺害したと判明。事件を追った吉川と中島の逢瀬が学校で問題となり、中島は学校を追われ、ふたりは離れ離れに。3話の途中で5年後へ。え? 学園モノはもう終わりナンスか? 急展開だが「生徒と教師の恋愛」には嫌悪感を抱く人も多く、しれっと時を進めたのは功を奏した。

 吉川がバイトで採用されたのは勢いのあるアプリ会社。社長は佐藤隆太。ある人物を恨み、復讐を企てる。

 実は、吉川と中島の純愛を阻んだのは、地味で陰気で陰険な教師・比嘉愛未だ。比嘉はいつの間にか人気作家に。学校を追われた中島の窮地を救って、ふたりは結婚。中島は義父(光石研)が社長を務める阿漕(あこぎ)な悪徳不動産会社に勤務。出来も性格も悪い義兄(和田正人)にいびられるが、冷酷で有能な社員として社長のお気に入りとなっている(隆太が恨んでいるのは光石ね)。

 とにかく、ふたりを邪魔する障壁が多い。障壁の皆さんを順にご紹介しよう。

 富田靖子が演じる吉川の母。のっけから大暴走。夫に浮気されて捨てられた経験から男に走る。しかも全力でクズ男に。娘の貯金を男に貢ぎ、娘との約束はドタキャンして男優先。そのくせ過干渉かつ依存的。執拗に娘につきまとうものの、なにやら犯罪にいっちょかんだ挙句、病に侵され……とジェットコースター人生の靖子(なんだか楽しそう)。

 比嘉・光石・和田の一家も当然、障壁。横暴おじさんこと光石は、とにかく水や飲み物を人に浴びせたがる。唇をひん曲げ、恫喝まがいの口調で人を虫けら扱いする姿は、どこぞの議員を彷彿とさせる。そんな親のもとで育った兄妹も、まあ陰険。とはいえ、人を愛せず、人に愛されない苦しみを、比嘉と和田が熱演。

 裏テーマが見えてきた。これはそういう物語だったかと腑に落ちる。中島も吉川も比嘉も和田も、ある意味「親に絶望した子供たち」。切りたくても切れない親子の縁、嫌悪や憎悪を抱いても共同体にされてしまう家族の呪縛を「不協和音(ディソナンス)」と表現したのかな。と、勝手に解釈して楽しんでるのよ。

 終盤にもうひと波乱。吉川の親友(高橋優斗)の嫉妬による暴走、隆太の右腕(清水伸)の裏切り。障壁が続々登場、さらには刑期を終えた眞島が、中島に恨みを抱えてシャバに戻ってくる! ね、飽きさせないでしょ?

吉田潮(よしだ・うしお)
テレビ評論家、ライター、イラストレーター。1972年生まれの千葉県人。編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。2010年より「週刊新潮」にて「TV ふうーん録」の連載を開始(※連載中)。主要なテレビドラマはほぼすべて視聴している。

週刊新潮 2022年9月22日号掲載