インフレより恐ろしい「スクリューフレーション」とは このままでは「一億総貧困化」

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 円安や資源価格の上昇で食料品や外食など軒並み値上げラッシュとなっているのはご存じの通り。おかげで日銀が目指していた2%のインフレターゲットはクリアしそうだが、景気回復の代わりに、日本を覆うのが「スクリューフレーション」だ。

『スクリューフレーション・ショック』(朝日新聞出版)の著者で、この問題を早くから指摘してきた第一生命経済研究所の首席エコノミスト・永濱利廣氏が説明する。

「スクリューフレーションは2010年ごろに米国のヘッジファンドマネージャーが言い始めたものです。一般的な“良いインフレ”は物価上昇と所得増加の好循環から生み出されますが、スクリューフレーションは、世界的に食料・エネルギーの価格が高騰することで収入以上に生活必需品の価格が上昇するため、生活必需品の支出割合が高い中・低所得者層の生活をより圧迫するインフレのことを言うのです」

働いている人の4割弱が年収200万円以下

 国税庁の民間給与実態統計調査によると、正社員の平均給与は496万円(2020年)。これに対して非正規は176万円(同)である。正規と非正規では300万円以上の差が開いており、しかも、非正規は増加している。その割合は約36%になっており、働いている人の4割弱が年収200万円に届いていないのが今の日本だ。

 ここに生活必需品の値上げラッシュが襲ってくるわけだが、

「すでに10年以上前から日本はスクリューフレーションの状態にあります」

 と永濱氏。総務省の家計調査年報によると、年収200万円以下の低所得者層の消費支出に占める生活必需品の割合は6割近くになる。最近のインフレでは高額商品より、食料やエネルギーなどの生活必需品が値上がりしており、これが購買力を抑える結果になっているのだという。

 では、スクリューフレーションがさらに進むと、どんな社会になるのだろう。

「このままだと中・低所得者層のみならず“一億総貧困化”が進むことになります。世界を見回しても、日本ほど長期停滞している国はほかにないので、海外で似た事例はありません」(同)

 わが国は、世界のどの国も経験したことのない悪性インフレの淵に立っている。

週刊新潮 2022年9月15日号掲載

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