鉄の女2.0「トラス英国新首相」を待ち受ける難題 このままでは大規模な暴動が起きる

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インフレ悪化が確実視…

 物価高騰などに対する有権者の不満が高まり、保守党の支持率はこのところ低迷し、最大野党・労働党にリードを許している。

 8月16から17日にかけて実施された世論調査によれば、「明日総選挙ならどの党に投票するか」の問いに対し、労働党43%、保守党28%で15ポイントもの大差がついている。次の総選挙は2024年までに実施される予定だ。

 英国の7月の消費者物価指数が10.1%の上昇となり、約40年ぶりの記録的な水準になっているが、米ゴールドマン・サックスが8月下旬「インフレ率は来年初めに20%を超える可能性がある」と警告しており、インフレは今後さらに悪化することが確実視されている。

 英ガス電力市場監督局は8月26日「家庭用の電気・ガス料金が今年10月から80%引き上げられ、標準世帯で年額3549ポンド(約57万5000円)になる」ことを明らかにした。

 英国では発電用燃料の40%を天然ガスが占めている。英国のロシア産ガスの依存度は非常に低いものの、欧州全体のガス価格が高騰したせいで英国の家庭用のエネルギー価格の上昇が止まらないのだ。

 電力・ガス市場が自由化された英国ではエネルギー規制当局が供給事業者の調達コストや利潤などを考慮して、電気・ガスの販売単価の上限を設定している。急激な値上がりから消費者を守る「エネルギー・プライス・キャップ」と呼ばれる制度で、これまで半年ごとに見直されてきた。

 10月の大幅な増額改定は、英国での天然ガス価格が1年前の5倍強になってしまったことが大きく影響している。

 販売単価の上限は来年以降、市場価格の動きをより早く反映するため四半期毎に見直されることになっている。次回の改定(来年1月)には5387ポンド、同4月には6616ポンドになると予測されているが、6616ポンドという数字は「月平均で約9万円」という異常な数字だ。今年4月に電気料金は既に54%も値上がりしており、英国の家計の大部分が「青息吐息」の状態にあると言っても過言ではない。

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