【初恋の悪魔】殺人事件の真犯人は誰なのか 全てのナゾを解くカギは「リバーシブル」

エンタメ 芸能

  • ブックマーク

Advertisement

事件に警察が関与か

 雪松署長の言葉がなくても境川署員を含めた警察関係者と警察組織は怪しい。まずタレコミの内容が事実と違っていた件。朝陽は転落死の現場におびき出された疑いがある。それが出来るのは警察内の人間だろう。

 朝陽がヘビ女・星砂を撃った件の処理も不審である。朝陽がリサを銃撃しようとしたところ、ヘビ女・星砂に当たってしまったもので、誤射だった。重大事故である。

 ところが、朝陽の処分は「銃弾紛失」の始末書だけ。誤射の隠蔽は組織ぐるみでないと無理だ。そもそも武装していた訳ではなく、人質も取っていなかったリサを撃とうとしたこと自体、おかしい。

 警察への疑念は尽きない。中学生殺しと服役中のリサが犯したとされる高校生・圭人殺しにも警察関係者か警察組織が絡んでいる疑いがある。

 まず、2017年8月に起きた中学生・塩澤潤(黒田陸)殺しと2019年に発生した高校生・圭人殺しには共通点があるのに、警察は別事件として処理した。その共通点とは「どちらの遺体も20カ所前後の刺し傷がある」「全身が濡れていた」「靴を履いていなかった」。まず同一犯だろう。

 中学生・潤殺しの犯人とされたのは矢澤栄太郎(三島ゆたか)というホームレス。リサと同じく現在は服役中である。

 矢澤は当初、容疑を否認したが、認められなかった。証拠が揃っていたためだ。矢澤の衣服には潤の血痕が付着し、荷物からは凶器や潤の財布が発見された。

 だが、犯罪マニアで天才的な推理力を持つ鈴之介は矢澤の犯行に首を捻る。「証拠が多すぎる」(鈴之介、第6話)

 この事件の元担当弁護士で推理作家に転じている森園真澄(安田顕)も矢澤の無実を信じている。森園は現在、鈴之介の隣人だ。

 矢澤が無実なら、どうして証拠が完璧に集められたのか。実際の犯人による偽装か、あるいは証拠を握っている警察関係者か警察組織による捏造と考えるのが自然だ。高校生・圭人殺しもリサが犯人であることを示す証拠が揃っていた。

 両事件にはまだ共通点がある。矢澤がホームレスだったことが裁判で不利に働いたと森園は見ている。リサも同じ。犯罪歴があったことが容疑者にされる一因となった。どちらも偏見である。

リサは犯人に仕立てられた?

 両事件の関係者たちは事件を見る目が「マーヤーのヴェール」で覆われていたようだ。鈴之介が説くマーヤーのヴェールとは古代インドの哲学用語で、真実の表層にある幻想。つまりは思い込みや常識、願望などである。

 いや、順番が逆かも知れない。マーヤーのヴェールの存在によって、偏見を持たれやすい2人が、犯人に仕立て上げられた可能性もある。

 第6話のラストでは3人目の遺体が発見された。やはり靴を履いていない。同一犯なら、矢澤もリサも服役中で犯行は不可能だから、2人とも無実だ。

 では、朝陽殺しと連続殺人の犯人は誰か? 治安を守るはずの警察が犯行に関わっていたら、究極のリバーシブルである。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。大学時代は放送局の学生AD。1990年のスポーツニッポン新聞社入社後は放送記者クラブに所属し、文化社会部記者と同専門委員として放送界のニュース全般やドラマレビュー、各局関係者や出演者のインタビューを書く。2010年の退社後は毎日新聞出版社「サンデー毎日」の編集次長などを務め、2019年に独立。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 3 次へ

[3/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。