【初恋の悪魔】殺人事件の真犯人は誰なのか 全てのナゾを解くカギは「リバーシブル」

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 日本テレビの連続ドラマ「初恋の悪魔」(土曜午後10時)が第6話まで済んだ。観る側に「恋や友情、青春とは何か」といった普遍的なことを考えさせつつ、笑わせ、さらに事件の犯人を考えさせるという濃厚な作品だ。残り4話。物語の行方を探る。

リバーシブルの象徴は「スカジャン」

「初恋の悪魔」の全体像を読み解くキーワードは「リバーシブル」にほかならない。

 それを象徴するのが、ヒロインで神奈川県警境川署生活安全課に勤務する摘木星砂(松岡茉優)の日常着・スカジャンである。

 星砂は普段、シャンパンゴールド色の布地に「赤虎」が刺繍された面を着ている。だが、内側にも緑色の布地に金色の「龍」が縫い込まれた面がある。星砂は赤虎側しか着ないが、表裏ではなく、両表だ。

 赤虎と龍はどちらも想像上の生き物。赤虎は中国では精霊と信じられ、時には人間に姿を変える。

 一方、龍はヘビと関係が深い。インド仏教の守護神・ナーガはヘビの精霊だ。仏教が中国に伝わった際、ヘビが龍に変わった。日本でも龍とヘビは密接な関係があると考えられ、例えば島根県出雲市の出雲大社には全国の神々を先導する龍蛇神が祀られている。

 星砂には2つの人格があり、隠れたもう1つの人格は「ヘビ女」と呼ばれている。スカジャンの内側にある龍の刺繍はヘビ女を指すのだろう。

 赤虎の刺繍のスカジャンを着た星砂とヘビ女の星砂。どちらが本当の姿なのか? たぶん、どちらも真の星砂である。リバーシブルのスカジャンが両表なのと同じだ。人は誰でも多面的。星砂はそれが極端に二分化されているのだろう。

 境川署総務課の馬淵悠日(仲野太賀)と同署刑事課の鹿浜鈴之介(林遣都)の関係もリバーシブル。悠日はあまりに普通な自分を情けなく思っていた。一方、鈴之介は特異な自分に悩み、疎外感を抱いていた。2人は好対照な存在だった。

 悠日の場合、亡き兄・馬淵朝陽(毎熊克哉)との関係もまたリバーシブル。神奈川県警捜査1課刑事だった朝陽が優秀だったのに対し、悠日は警察学校で落ちこぼれてしまい、警察官にすらなれなかった。

 もっとも、誰かが表で誰かは裏という訳ではない。やはりスカジャンと一緒で、みんな表。個性が違うだけだ。

 振り返ると、これまでに鈴之介、悠日、赤虎の星砂、境川署会計課の小鳥琉夏(柄本佑)の4人が解決した事件の犯人や状況もリバーシブルだった。

 典型例は第3話。万引きを目くらましにしてスーパーの金庫から現金を抜き取っていたのは古株パート従業員の下田絹子(松金よね子)だった。模範的なパート従業員と目されていたが、違う顔があった。それも絹子の実像である。リバーシブルだった。

 おそらく残された未解決事件を解くカギもリバーシブルである。例えば犯人が「思いも寄らない人物、あるいは組織」かも知れない。

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