「安倍元首相」銃撃後に起こった警察人事のサプライズ 次の長官・総監は?
栗生副長官の存在
「基本的にここ数年の警察の人事は元警察庁長官で現在、官房副長官と内閣人事局長を兼ねる栗生俊一氏(1981年、63歳)が決めてきました。今回も中村長官の辞職は当然として、警備局長の櫻澤健一氏の辞職など全て栗生氏が承諾したものと見てよいでしょう」
と、社会部デスク。栗生副長官のお眼鏡にかなう者は残り、かなわない者は組織を去る。厳然たる現実だ。櫻澤氏も栗生氏に好かれなかった1人だったという。
「今回の人事以前の前提として、中村氏と同期の露木氏とで3年くらいの任期を分け合うことになっていました。1986年入庁組は人材の当たり年で、中でもこの2人を評価する声は大きく、実際、栗生氏もその実力を認めていた。しかし今回、中村氏が就任から1年足らずで辞職となったので、露木氏が何も問題がなければ残りの1年強を務めることになりそうです」(同)
栗生副長官は中村→露木のラインまでは表立って認めてきたが、その後のラインについてはなかなか判然としなかった。
「栗生氏に評価されているとされてきた1987年入庁の人物も最終的にはハジかれ、露木氏の次は誰かという点が注目されてきました。今回の人事でそれが明らかとなりましたね」(同)
サプライズ人事
「安倍氏の首相時代に秘書官を務めた大石警視総監が年内で辞めて、小島官房長がその後継となるようです。そして、新たに次長となった緒方氏が長官の最有力候補となりました。事前にそういう見方はあったにせよ、ちょっとしたサプライズと言えるでしょう」(同)
次期長官候補の緒方氏は警視庁警務部長、警視庁副総監などを経て警察庁生活安全局長を務めていた。
「これまでこなしてきたポジションを踏まえると、緒方氏が警察庁次長に就くという流れは異例ですね。一方で、小島氏が辿ることになりそうな、警察庁官房長から警視総監というルートも米村敏朗氏(1974年)までさかのぼらなければならないほど稀なことだと思います。もっとも、栗生氏が人事を握るようになって、異例とか前代未聞ということはあまり意味を持たなくなりましたね」(同)
次期長官が緒方氏、総監が小島氏だとして、その後はどうなのか?
「楠交通局長が長官候補として有力視されている他、1990年組の原警備局長と渡邊総括審議官がシノギを削っており、1990年入庁の太刀川浩一警視庁刑事部長も長官・総監候補です。この中で原警備局長は安倍氏の首相時代に秘書官を務めた人物で、安倍氏自身、自分の秘書官などを務めた人物を殊のほか評価するきらいがあり、実際そのように処遇されているキャリア官僚は多いですね」(同)
警察庁長官と次長、そして警視総監には62歳という定年が設定されている。警察人生の最終コーナーに差し掛かってきた彼らは、すごろくをどこまで進められるだろうか──。
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