「いきなり!ステーキ」社長辞任の前途多難 店舗拡大、顧客軽視…そして最大の失敗は?

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「いきなり!ステーキ」を展開するペッパーフードサービスの一瀬邦夫社長(79)が8月12日、業績不振の責任を取って辞任した。後任は長男で副社長の一瀬健作氏(50)。2013年に開業した「いきなり!ステーキ」は、高級ステーキが格安で食べられるとして人気が急上昇。瞬く間に500店舗近くまで全国展開したが、2019年から赤字に転落していた。

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 1985年設立のペッパーフードサービスは、元々ステーキ専門店の「ペッパーランチ」が主力業態だった。それが「いきなり!ステーキ」の登場で、こちらが主力になった。

「2013年に始めて2019年までに493店。チェーン店としては史上最速で全国に広がりました。ところが2022年4月には220店と半分以下になってしまったのです」

 と解説するのは、ビジネス評論家の山田修氏。

カニバリゼーション

「ジェットコースターのように上がって急下降したわけですが、業績悪化を招いた原因は主に3つあります。1つは、際限なく店舗を拡大したことです。外食のチェーン店は500店舗を目標にします。ペッパーフードは地域戦略がなく近接店もどんどん作っていったため、店同士がカニバリゼーション(共食い)になってしまいました。2018年4月には、既存店の売上が減少したのに、2019年まで出店を続けてダメージを広げてしまったのです」

 2つ目は、顧客軽視という。

「2019年に営業利益が赤字に転落すると、対応措置として食材の原価率を下げました。原価率70%だったのが、50%にまで下げたため、ステーキが美味しくなくなったのです」

 さらに、リピーターを確保するために始めた「肉マイレージ制度」を廃止した。

「ステーキを食べた量でポイントがたまり、3キロになるとゴールド会員、20キロでダイヤモンド会員、100キロを超えるとプラチナ会員となり、それぞれ特典がついていました。これでリピーターが増えて、会員数は実に1500万人にも達したのです。ところが赤字転落で2020年12月、肉マイレージ制度を廃止。半年間の来店回数に応じてランクを決めるようにしたため、さらに客離れが起きました」

 肉マイレージの上級会員から不満の声が上がり、半年後にはプラチナとダイヤモンド会員には累積グラム制度を復活させた。

「3つ目は、2020年6月、祖業だったペッパーランチを売却したことです。ペッパーランチ単体の業績を見ると、2019年12月期の売上は87億円、利益は12億円と黒字を計上していました。経営再建のためには、利益を出しているペッパーランチを残して、『いきなり! ステーキ』を売却すべきでした。これは大きな戦略ミスです。一瀬前社長は、『いきなり! ステーキ』への思い入れが強かったんでしょうね」

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