不動産バブルがはじけた韓国 通貨売りと連動、複合危機に

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1997年の通貨危機も金融不安が根に

――不動産バブルの崩壊は何をもたらすのでしょうか。

鈴置:日本では金融システムが破壊されました。1990年代の日本で、不動産投機に貸していたおカネが回収できなくなっていくつかの銀行が消滅したのを記憶している人も多いと思います。

 金融システムが破壊されれば、製造業にも資金が円滑に供給されなくなりますから経済全体が沈滞します。生産年齢人口の減少により消費も縮みますから、この面からも経済規模は頭打ちに陥りました。

 韓国の場合、不動産投機の主体が企業ではなく個人ですから、様相は若干異なるかもしれません。1件当たりの貸し出しは個人ですからさほど多くない。

 しかし韓国では、3ヶ所以上からおカネを借りている多重債務者が全人口の1割弱に達します。彼らの多くが不動産や株式、暗号資産(仮想通貨)でバクチを張っているわけで、バブルが崩壊すればどれだけの借金が踏み倒されるか、考えるだけで恐ろしくなります。

 金融システムの破壊、あるいはその懸念だけで、通貨危機を呼び込みます。1997年の韓国の通貨危機も、根っこには金融システムの動揺がありました。

 1997年、今は現代自動車の傘下に入って再生した起亜自動車など大手、中堅財閥の破綻が相次ぎました。財閥にカネを貸していた韓国の銀行に対する懸念が増していたところに、タイから始まったアジア通貨売りの嵐が襲いかかったのです。

 最近もほとんどの通貨が売られる、ドル独歩高の時代に突入しました。ウォンも売られ続け、2020年12月には1ドル=1085ウォン前後だったのが24%程度下がり、今や1340ウォン台。

 ついに8月29日の終値は先週末比19・10ウォン安・ドル高の1350・40ウォンを付けました。2008年の通貨危機の余燼(よじん)がくすぶっていた2009年4月28日の1352・80ウォン以来の安い水準です。

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