7股報道も無傷！　「R-1」王者・お見送り芸人しんいちが最強の嫌われ芸人になった理由

「いい人」が好かれるお笑い界だが…

　しんいちはなぜこんなに嫌われているのか。彼のバラエティ番組での対応や言動を見ていると「けつをまくるのが早いな」と思う。ほかの芸人などに自分が少しでもイジられたり、責められたりすると、すぐにすねたようなそぶりを見せたり、開き直って攻撃的な態度に出たりする。恐ろしく器が小さい。でも、そういうところが何とも言えず人間臭くて、目が離せなくなる魅力があることはたしかだ。

　最近のお笑い界では、どちらかと言うと「いい人」の方が好かれる傾向にある。しんいちの事務所の先輩であるサンドウィッチマンなどは、典型的な「いい人」として万人に愛されているタイプの芸人である。

　だが、すべての芸人がそちらの道を目指す必要はない。悪には悪の魅力がある。芸人の世界では持って生まれた人間性がそのまま武器になる。しんいちのような生粋のヒールキャラというのは、それはそれで貴重な存在なのだ。

　賞レースのチャンピオンは、無条件で称賛され、尊敬され、愛される存在であるはずなのに、そのセオリーを覆すほど性格が悪いというのが、新しくて面白い。史上最も嫌われている「R-1」王者は、史上最も深く人々の心に刺さっている「R-1」王者でもある。悪のカリスマとしてこれからも道なき道を突き進んでいってほしい。

ラリー遠田
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』（キネマ旬報社）の編集長を務めた。『イロモンガール』（白泉社）の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』（ディスカヴァー携書）、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』（イースト新書）、『逆襲する山里亮太』（双葉社）『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』（光文社新書）など著書多数。

デイリー新潮編集部

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