幸せな老後のための「五つのM」とは 「老年医学」の新常識を米在住医師が明かす

ドクター新潮 健康 長寿

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サンダルに注意

 では、どうすれば転倒リスクを下げられるのか。私が患者さんを外来で診る際は、必ず足を見るようにしています。まず、ちゃんとした靴を履いているか。着脱が楽だからなのか、古びたサンダルを履いている患者さんが意外と多い。しかし、やはりサンダルは転びやすいですよね。

 次に靴を履いている方の場合は、靴と靴下を脱いでもらう。そして、しっかり爪が切られているか、水虫はないかなどをチェックします。爪が伸びていたり、水虫をそのままにしている方は、普段から自らの足元への意識が薄いことを意味します。歩く際の大事な「道具」である足のケアをおろそかにしている方は、やはり転倒しやすい。そして、足のケア不足は同時に、自宅での生活が乱れていることを示唆しているともいえます。「足は物語る」のです。

なんでもかんでも認知症

 第2のMは「Mind(こころ、認知機能・精神状態)」です。高齢者に意外と多いのは、“Mindの誤診”です。

 例えば、疲れやすくなって元気がなくなり、物忘れもするようになった。こうした症状から心療内科や精神科に行くと、うつ病などと診断されることがあります。しかしよく調べてみると、その患者さんは甲状腺機能低下症だったというケースがありました。甲状腺ホルモンの異常により、全身の代謝過程が遅くなり、疲れやすさや物忘れの症状が出ることがあるのです。この場合、不足している甲状腺ホルモンを補うことで、自然と心の状態も改善していきます。

 さらに、Mindでは認知症が気になるところでしょう。実際65歳以降、前頭葉や側頭葉を中心に脳の容積は1年あたり約7立方センチずつ減っていき、確かに高齢者は認知症リスクを抱えているといえます。医学誌「ランセット」では、高齢期においては「喫煙」「うつ」「社会的孤立」等を排除することで認知症のリスクを低減できることが紹介されています。

 一方、多少物忘れをすることが増えただけで、認知症と考える必要はありません。自立した生活が送れているかどうかもポイントなのです。したがって、なんでもかんでも認知症とレッテルを貼ってはいけません。

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