中村剛也「450本塁打」で名球会に揺さぶり 大谷翔平も選外という入会規定の“欠陥”

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400本塁打以上での名球会入りにも違和感なし

 名球会は、「投手分業制」という時代の変化に即し、2003年12月の総会で250セーブでも入会資格を与えるよう規定を追加した。

「500本塁打は野球の変化に合わせるという類いのものではなく、無条件で入会を認めてもいいぐらいに希少価値がある。もともと名球会入りには、本塁打を多く打つ打者なら安打も多いだろうという前提があったと思う。500本塁打を打つような打者なら当然、2000安打はいくだろうと。しかし、何事にも例外はあるもので、当てはまらない打者は出てくるものだ」(同)

 通算500本塁打以上の打者は全員2000安打以上を放った。一方、400本塁打以上で見ると、20人のうち4人が2000安打に届いていない。中村のほか、474本塁打の田淵幸一(元阪神など)が1532安打、464本塁打のタフィ・ローズ(元近鉄など)が1792安打、403本塁打の山﨑武司(元中日など)が1834安打だった。

「400本塁打でも達成者は2000安打の半数以下。日本はメジャーより試合数が少ないことを加味すれば、400本塁打以上を名球会入りの条件に加えても、ファンが違和感を覚えることはない」(遊軍記者)

特例適用はいまだゼロ

 名球会の「入会規定」は昭和生まれ以降の日本プロ野球の選手、元選手で、(1)投手として通算200勝以上、または通算250セーブ以上、(2)打者として通算2000安打以上、(3)特例入会制度の三つがある。このうち(3)は、19年12月に名球会の総会で新たに決まっており、(1)と(2)の条件を満たせなかった最終候補者を総会に諮り、会員の4分の3以上の賛同が得られれば入会を認めることにしたものだ。

 18年7月、上原浩治(元巨人など)が日米通算での「100勝、100ホールド、100セーブ」を記録した。ダルビッシュ有(パドレス)が自身のツイッターで「200勝以上の価値があると思います」と称えたように、先発、リリーフで万能ぶりを発揮した上原ならではの快記録だったが、当然名球会には入れなかった。この一件が「救済措置」とも言える規定追加の契機になったとされている。

 だが、特例適用はいまだゼロだ。しびれを切らしたのか、既に現役引退していた上原氏は昨年9月、栗山巧(西武)が2000安打を達成した直後に、ツイッターで「もちろん2000本は凄いことです!」としながらも、「54人目…先日の西川選手の盗塁など、人数で言えば、こちらの方が難しいのに… 300盗塁…30人目」と西川遥輝(当時日本ハム、現楽天)を引き合いに「名球会…そろそろ基準を見直してもいいんじゃない??」と問題提起に至った。

「名球会は、発足時に上原のような選手の出現を予想していない。大谷翔平(エンゼルス)のような二刀流選手も、もちろんそう。大谷は早くに投打どちらかに絞っていれば200勝、2000安打いずれも達成可能な能力を持っていたが、二刀流のため、どちらの達成も難しくなっている。それでも、大谷が名球会に入ることに異を唱える者がいるはずがない。特例で曖昧にするのではなく、規定を見直す時期は来ていると思う」(前出の元NPB監督)

 今後は前人未到の3度トリプルスリーを達成した山田哲人(ヤクルト)が2000安打に届かないことも想定される。

「特例を認めるならどのタイミングで誰を認めるか。ハードルを下げ、乱発すると名球会入りが安売りになる。ある程度、権威が守られるような記録の達成者から認めていくのではないか。通算本塁打数を新たな入会条件に加えるのが難しいなら、中村は特例適用の先例にするにはもってこいなのだが……」(同)

 機は熟している。名球会の決断に注目が集まる。

津浦集(つうら・しゅう)
スポーツライター

デイリー新潮編集部

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