祇園の「中国人クラブ」で手玉に取られた日本人の素性 元公安警察官の証言

  • ブックマーク

Advertisement

 日本の公安警察は、アメリカのCIA(中央情報局)やFBI(連邦捜査局)のように華々しくドラマや映画に登場することもなく、その諜報活動は一般にはほとんど知られていない。警視庁に入庁以後、公安畑を十数年歩き、数年前に退職。昨年9月に『警視庁公安部外事課』(光文社)を出版した勝丸円覚氏に、摘発された京都・祇園の中国人クラブについて聞いた。

 ***

 2013年6月、京都・祇園にある中国人クラブが京都府警の家宅捜索を受けた。中国人ホステス(当時31)が在留資格を得るためにクラブの常連だった陸上自衛隊桂駐屯地(京都市西京区)の陸曹長(当時53)と偽装結婚していたことが発覚したためだ。

「中国人ホステスと陸曹は公正証書原本不実記載・同行使の容疑で逮捕され、ホステスは有罪が確定。懲戒免職となった陸曹長は13年9月、懲役2年執行猶予3年が言い渡されました」

 と解説するのは、勝丸氏。

「実を言うと、京都府警の本当の狙いは、産業スパイを摘発することでした」

親族が中国共産党の幹部

 中国人クラブは、八坂神社に近い雑居ビルの2階に2007年オープンした。

「ママは気立てのいい美人の中国人で、7、8人いたホステスはいずれも中国籍でした。ママの親族は中国共産党の幹部だと言われていました。料金は1人2万円程度で、祇園でもそんなに高くはありません。ホステスの多くは若い留学生だったので評判を呼び、人気店になりました」

 京都に本社のあるハイテク企業の幹部やエンジニア、陸上自衛隊桂駐屯地の幹部も常連になった。

「中国人女性たちが狙っていたのは、電子部品や精密機器など、日本の最先端技術でした。ハイテク企業の幹部やエンジニアが来ると、彼女たちはハニートラップを仕掛けるのです。逮捕された陸曹長も色仕掛けで偽装結婚してしまったのです。警察は、このクラブ自体が中国の情報機関の活動拠点だったと見ています」

 店の中国人女性と深い関係になったハイテク企業の技術者は、機密情報を渡していたという。

「製品情報や技術部門の人事異動に関する情報も渡していました。中には、店でホステスに新製品の設計図を見せた技術者もいたそうです。京都府警は、このクラブには大手を含めて5社以上の企業関係者が出入りしていたことを把握していました」

 中国人女性が入手した情報はどうやって中国当局に渡されるのか。

「彼女たちは駐日中国大使館や領事館の職員と接触することはありません。外事警察の目が光っているので、そんなことをすると諜報活動がバレてしまいます。ママやホステスは春節(2月3日)に帰国した際、本国の諜報機関に情報を伝えることになっていました」

次ページ:お持ち帰りOKの女性を常駐

前へ 1 2 次へ

[1/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。