「家、ついて行っていいですか?」が最激戦区「日曜20時」へ引っ越し テレ東の狙いと戦々恐々のテレ朝

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神妙になる矢作兼

「家、ついて――」は8年前に始まった時点では月曜の深夜番組だった。ディレクターが街のあちこちで出会った人に声を掛け、家に連れて行ってもらうスタイルはずっと変わっていない。人気上昇と共に放送時間帯が繰り上がった。

 タイトルに「家」と入っているものの、中心となるのは声を掛けた人たちへのインタビュー。それでも家に行く理由は、相手が素顔を見せてくれやすいし、本音も出してくれやすいから。

 登場するのは家を建てたばかりで嬉々としている若い夫婦、妻に先立たれてからその存在の大きさに気づき憔悴している老紳士、子供が事故死して人生が暗転した男性、幼い子供を亡くした悲しみを抱き続ける老女、キャバクラ通いを生きがいとする独居老人、難病の子に全てを捧げている人――。

 レギュラーMCはおぎやはぎの矢作兼(50)とビビる大木(47)。普段はひねくれたキャラクターで、不倫スキャンダルを起こした同じ芸能事務所の渡部建(49)をこき下ろした矢作が、この番組では時に神妙になる。

 子供の病気を治すために懸命な親の話を聞き、目を真っ赤にする。不定期で進行役を務める人情家の狩野恵里アナ(35)は泣きっぱなしに。人生の哀歓がギュッと詰め込まれた番組だ。

 番組を企画したのは「ミスター・テレビ東京」とも言える高橋弘樹氏(41)。「吉木りさに怒られたい」(2014年)など数々のテレ東らしい個性的な番組を考えた。「家、ついて――」は同業のテレビマンからも絶賛され、2015年の日本民間放送連盟賞テレビエンターテインメント部門の最優秀賞を受賞している。

 テレ東が「家、ついて――」を日曜午後8時台に移す理由はいくつも挙げられる。まず、これまで放送していた水曜午後9時台で10月からウエンツ瑛士(36)をMCとする新報道番組「60秒でわかるニュース」が始まる。引っ越さなくてはならなかった。

「60秒でわかる――」は5月にBSテレ東でスペシャル番組として放送したところ、好評を博したため、レギュラー化が決まった。話題のニュースとその関連用語を分かりやすく、短く伝える番組だ。

 同じ時間帯にはNHK「ニュースウオッチ9」があるものの、民放はドラマとバラエティばかり。情報・教養番組はないため、戦略的編成と言える。午後10時からのニュース「ワールドビジネスサテライト」にもつながる。

 一方、日曜は現在、午後6時半から同9時まで「日曜ビッグバラエティ」を放送中だが、厳しい戦いが続いている。この番組は毎回、違った企画を放送しているものの、最近はヒットに恵まれない。

 2017年1月に始まり、2018年1月の第6回では世帯視聴率で13.5%をマークした「池の水全部抜く大作戦」も最近は前記の通り低調だ。

 7月24日放送の「迷惑トラブル最前線!『倒壊家屋…ハト糞…巷の問題をスゴ腕弁護士が解決』」は世帯7.4%、個人4.2%、コア1.5%と好成績だったものの、世帯視聴率が2、3%台の週も目立つ。背景には2時間半の長時間企画を毎週番組化するのは難しいという構造上の問題がある。

「日曜ビッグバラエティ」が振るわないと、後に続く番組も影響を受けてしまう。一定時間、それまで観ていた番組からチャンネルを変えない人は決して少なくないからだ。前の番組の視聴率が良いと、次の番組の冒頭も視聴率が良いという傾向がある。無論、その逆もある。

 木梨憲武(60)がMCを務める午後9時からの「~夢のオーディションバラエティー~Dreamer Z」もそう。苦戦を余儀なくされている。7月24日は世帯2.4%、個人1.3%、コア0.7%だった。

「家、ついて――」が引っ越すと、これらの問題が解決に向かう。まず「日曜ビッグバラエティ」は1時間短縮の90分化によって負担が減る。「家、ついて――」が一定以上の視聴率を獲ると、そのまま「~夢のオーディションバラエティー」を観る人が増えることが見込める。

 新天地でリスタートする「家、ついて――」の責任は重大だ。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。大学時代は放送局の学生AD。1990年のスポーツニッポン新聞社入社後は放送記者クラブに所属し、文化社会部記者と同専門委員として放送界のニュース全般やドラマレビュー、各局関係者や出演者のインタビューを書く。2010年の退社後は毎日新聞出版社「サンデー毎日」の編集次長などを務め、2019年に独立。

デイリー新潮編集部

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