木下優樹菜の「ADHD告白」を精神科医が危惧するワケ “ステマ疑惑”にはどう答えるか

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学会も注意喚起を出す治療法

 さて、診断には使えないのにも関わらず、ブレインクリニックが脳波の検査(QEEG)を行う理由は何だろうか。HPにはQEEG検査は〈TMS治療の指標にもなる〉ことが謳われている。

「頭にコイルをつけ、脳に電気刺激を行うTMS療法(rTMS療法)は、中等症のうつ病患者の治療に有効とされ、日本で保険適用にもなりました。しかし、ADHDをはじめとする発達障害の治療法としては認められていません」(松崎医師)

 2020年に日本精神神経学会が発表した注意喚起では、下記の通り明確に否定されている。

〈発達障害圏の疾患(自閉症、ADHD、アスペルガー障害など)やそれに関連する症状、あるいは不安解消や集中力や記憶力の増進などに対する効果は、海外においても確認されていません。〉

 それにもかかわらず、ブレインクリニックのHPでは〈TMSは発達障害に対して治療効果があり、薬物療法と異なり根本的な改善にもつながる治療法ですが、治療を受けた全体の10%程度は残念ながら効果が見られないことがあります。〉と明記されているのだ。

ステマ疑惑についてクリニックの回答は

 一方で、こうした実情がありながら、動画内で木下がブレインクリニックの名前を挙げて紹介していることなどから、ステルスマーケティング疑惑を疑う声もある。

〈木下優樹菜さん、なぜわざわざクリニックの名前出したの?ステマにしか思えないんだよな〉

〈木下優樹菜、わざわざ自費診療クリニックの固有名詞と保険のきかない検査方法の結果を出しているところに、ステマを疑っている〉

〈動画見たけど自分で全く状況把握してないしクリニックのステマに見えてしまった〉

(Twitterから一部抜粋)

 当のブレインクリニックに対し、「木下はADHDの診断を受けたのか」を質問すると、「来院の事実の有無にかかわらず、個人情報のため回答できません」との回答だった。

 またステマ疑惑については、「ご指摘のような事実は全くございません」と否定した。

 さらに、「クリニックHP等で、rTMS療法がADHDをはじめとする発達障害の治療に有効であるかのように誤解させ、治療を行っているのではないか」という点に関しては、以下の回答があった。

「ご指摘のような患者様を誤解をさせて治療を行っているという事実はございません」

 先の松崎医師は、木下が発達障害を告白することによって、良い影響があることも期待しているという。

「『ADHDだからこんな性格』というレッテル貼りに繋がることは心配ですが、影響力のある木下さんだからこそ、出来る啓蒙もあると思います。木下さんの動画を見て『自分が困っているのはADHDが理由かもしれない』と思った人は病院に行って相談してみるのが良いと思います。ただし脳波の検査で診断出来ると誤解せず、根拠のある診断が受けられる病院に行ってください。それが保険適用の治療を受けることにも繋がります」

 今後は「ADHD特番をしたい」と動画内で語った木下。芸能界を引退したとはいえ、現在でも続く影響力の大きさを自覚して、是非とも正しい情報を発信して欲しいものだ。

デイリー新潮編集部

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