「会うたびにドラマの話を」 安倍元総理の知られざる素顔を櫻井よしこが明かす

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「孤独なんだよね」

 作品は最初から強烈な印象で迫る。エリザベス2世女王陛下の夫君、フィリップ殿下はヴィクトリア女王の血を引きながら、4人の姉がナチスドイツと関係していた。安倍氏が語る。

「フィリップ殿下はスコットランドの寄宿学校(ゴードンストウン)に送られるんですが、一族とナチスの関係、欧州では許されない暗黒の家族史に彼は直面するんですね」

 ここで彼はすさまじいいじめにあい、身心共に深く傷つきながらも耐え抜いた。エリザベス女王と結婚し、皇太子を得たとき、チャールズを自分と同じ寄宿学校に入れた。チャールズも自分同様に厳しい試練に耐えて、強い人間になってほしいとの想いからだった。しかし作品はチャールズの脱落を生々しく描ききった。

 別の日、また話題が「ザ・クラウン」に及んだ。

「ダイアナのところまで見ました? あれはやっぱりチャールズが酷いよね」

 同時にこうも語った。

「幼い頃、チャールズは両親が多忙で、あまり一緒に過ごしていないんですね。孤独なんだよね。だから、自分を受け入れてくれる大人の女性を求めていたのかもしれませんね」

 当事者の一方を悪いと決めつけるのではないのだ。そして、いかにも愉快そうにこんな話も教えてくれた。

「この前、ジョンソン(英首相)と会ったとき、聞いたんですよ。『ザ・クラウン』の話は真実かと」

 安倍氏の笑顔がはじけた。

「彼は少し考えて、大英帝国の首相としては答えられない。但し、女王陛下には日本国の首相が『ザ・クラウン』を見ていると報告しておく、と言っていました」

秋篠宮家の件

 安倍元総理はジョンソン首相とここまで打ち解けて話せる間柄だったのだ。「ザ・クラウン」を安倍氏は日本にひき較べて見ていたとも思う。作品はこれでもかこれでもかと英王室のスキャンダルを暴いているが、王室、あるいは皇室を守るという共通の重い責務を担う二人の首相は、懸念も共有していたはずだ。

 メディアが秋篠宮家の件を批判的に取り上げ続けることについて、安倍氏は度々語った。

「秋篠宮家を貶めることは、皇室全体を貶めることに、どうしてもなっていく。皇室の権威を貶めることは日本を貶めることなんです」

 過ぎたる非難を浴びせることで皇室と国民の絆が損なわれてしまえば、日本国の力自体が本当に衰退していくと、安倍元総理は人一倍気にかけていた。

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