H.I.S.が「ハウステンボス」を投資会社に売却へ 澤田会長にとって売却額800億円は高いか安いか

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 7月21日、大手旅行会社のエイチ・アイ・エス(H.I.S.)が傘下のテーマパーク「ハウステンボス」(長崎県佐世保市)を売却すると報じられた。すでに香港の投資会社PAGが株式の9割の取得を希望し、買収価格は800億円になる予定という。

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 新型コロナの影響で赤字が続いていたハウステンボスは、花火やパレードなどのイベントが功を奏し、2022年3月中間連結決算は3億9200万円の営業利益を計上、中間期で3年ぶりに黒字に転じた。

「なぜハウステンボスを売却しなければならないのか?それはH.I.S.の財務状況をみれば一目瞭然です」

 と解説するのは、ビジネス評論家の山田修氏。

「H.I.S.は、コロナ前の2019年10月期で、売上が8080億円ありました。毎年右肩上がりに成長し、いよいよ売上1兆円企業になるかと言われていました。ところがコロナの影響をもろに受け、2021年10月期の売上は1180億円まで落ち込んでしまいました」

自己資本比率は5.8%

 H.I.S.の経常利益はどうか。

「2019年10月期で経常利益は170億円ありました。それが2020年10月期で310億円の赤字、2021年10月期は、630億円の赤字と倍増しています。かなり厳しい状況ですね。2021年には、コロナ対策の雇用調整助成金が207億円出ましたから、これで何とか救われた形です」

 財務状況の健全性を示す自己資本比率も厳しい数値を示している。

「2019年10月期は、16.8%でした。2021年10月期は9.9%と落ち込み、直近の2022年4月の4半期は5.8%にまで落ち込んでいます。通常、健全な数値は40%で、50%が優良となっています。20%以下は厳しく、5.8%まで下がると、何らかの手を打たなければなりません。今回のハウステンボス売却は必然的な選択と言えるでしょう」

 さらにH.I.S.グループには、大手クルーズ会社が2つある。

「1つは1999年に設立したクルーズプラネットで、社長はH.I.S.の澤田秀雄会長の妻、まゆみさんです。もう1つは2005年に設立したベストワンドットコム(ベストワンクルーズ)で、会長は澤田会長の長男・秀太氏です。新型コロナの感染拡大が始まった頃、ダイヤモンド・プリンセス号で700人以上が感染、14人が死亡しました。その影響で2社ともかなりの業績不振となっています」

 H.I.S.グループはコロナの影響をもろに受けた形だが、そもそも、H.I.S.はどういう経緯でハウステンボスを買収したのか。

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