「酸素ボンベを使うことも」 “ハードすぎる幽霊役”を演じる若村麻由美が語る「頭痛肩こり樋口一葉」の見どころ

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 劇作家・井上ひさしの作品のみを手がける劇団「こまつ座」の旗揚げからおよそ40年。記念すべき第1回公演作品の「頭痛肩こり樋口一葉」が、8月5日から東京・新宿の紀伊國屋サザンシアターで再演される。

 樋口一葉をはじめ、6人すべての登場人物が女性という異色の舞台。

 その一人で幽霊の花螢(はなぼたる)を演じるのは、女優の若村麻由美(55)だ。

「今回が最後かも……。といっても、役者を引退するわけではありません」

 と、ご本人は笑顔で語る。再演を重ね思い入れのある役というが、

「これまでで一番体力的にハード。幽霊なので生身の人間ではありえない動きの連続ですからね。塀の上から現れたかと思うと、次の瞬間には井戸から顔を出したり、とにかく動き回る。前回までの舞台をご覧になった方から、よく“どんなからくりになっているの?”と聞かれましたが、とくに仕掛けはありません。全部、自力ですよ」

舞台袖に酸素ボンベを用意

 明治期の文壇で活躍しながら、わずか24歳という若さで他界した樋口一葉が主人公。毎年、お盆には一葉(劇中では夏子)にだけ見える花螢と名乗る幽霊が現れる。両者の不思議な交流とともに、当時を生きる女たちのたくましい姿が生きいきと描かれる。

「お盆でございます……」

 と登場する若村の演技は、幽霊にもかかわらず、どこかユーモアを感じさせる。

「初演の稽古始めに、演出家の栗山民也さんは“これは生者と死者の話。幽霊らしくない、イキイキとした幽霊を”と仰いました。その上、舞台を縦横無尽に動き回るから、ケガが絶えず、終演後は氷水に足を浸すなどのケアをしていました。文字通りの満身創痍ですね」

 それだけに、独自の工夫も凝らしているそうだ。

「全速力で舞台裏を走り回っているからといって、舞台に出た時に“ハァハァ……”と息を切らしているわけにはいきません。だから、舞台袖に酸素ボンベを用意しておき、それを吸って息を整えてから舞台に出るようにしたこともあります」

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