「契約の自由」を侵害するNHKの「割増金徴収」 次はネットでも受信料?

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放送法の制定に関わった人間ですら…

 近く上梓予定の拙著『受信料の研究』でも引用しているが、放送法の制定に関わった電波監理委員会文書課長の荘(しょう)宏ですら、のちに自著『放送制度論のために』で次のように言っている。

「契約するかしないかの個人の自由を完全に抹殺する規定を法律で書き得るかについては大きな疑問がある。さらにこのような法律がかりに制定しうるものとしても、この制度の下においては、名は契約であっても、受信者は単に金を取られるという受身の状態に立たされ、自由な契約によって、金も払うがサービスについても注文をつけるという心理状態からは遠く離れ、NHKとしても完全な特権的・徴税的な心理になり勝ちである」

 荘は放送法制定当時、受信契約強制も受信料強制徴収も反対するGHQに対し、それらが組織維持のために必要だとする逓信官僚とNHKを擁護する側にいた。

 それでも、このように受信契約強制と受信料強制徴収が違憲であるという認識を強く持ったのは、もともと日本放送協会は戦前の無線電信法でいう私設無線電話施設者、すなわち、私的に放送を始めた民間業者で、戦前・戦中に軍国主義プロパガンダを流して軍部と一体化したものの、その本質に変わりがないことを荘が知っていたからだ。それは戦時中朝日新聞が軍部と一緒になって国民を戦争に駆り立てても、営利目的の一民間企業に変わりないのと同じだ。

国民の目をそらすために

 このような背景から、放送法で受信契約を義務付けながらも、違反に関して罰則規定は設けない、いわば訓示規定にすることで落ち着いた。そして、受信契約義務は放送法によって定めるが、受信料の支払い義務は日本放送協会放送受信規約によって定めるという、まことに奇妙な、矛盾した現在の受信料制度が存在することになった。

 その後、NHK受信料の支払いを義務化しようとした法案が、1966年と1980年の2度、国会に提出されたが、どちらも通らなかった。それだけ国会議員も国民の反感を恐れたということだろう。

 今回、正当な理由もなく受信契約を結ばない世帯にNHKが割り増しした料金を要求することを可能にし、これが受信契約義務違反に罰則を設けることだと気が付かれないようにしたのはこのような経緯を踏まえてのことだ。これを姑息といわずしてなんといおう。

 さらに、今回の改正では国民の目をそらすために、抱き合わせで、受信料値下げが示唆されている。朝三暮四もいいところだ。しなければならないのは、受信料の廃止であって、値下げではない。これから1年ごとに3分の1ほど値下げして、3年後には無料にするというなら話は別だ。だが、そのつもりはないらしい。

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