【櫻井よしこ氏特別寄稿】「人間じゃない、たたき斬ってやる」への気持ちを語った安倍総理

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頭脳明晰な人だった

「言論テレビ」でも安倍氏の説明は見事だった。平和安全法制の制定によってわが国は集団的自衛権の行使が、一部だが可能になる。なぜそうしなければならないのか。安倍氏の説明は実によく整理されていた。

(1)集団的自衛権の政府解釈は40年前のもので、当時はわが国よりも外国を守るためという概念だった。

(2)外国のためならそれは必要最小限を超えており憲法違反とされた。

(3)ところがこの40年間に北朝鮮さえ核やミサイルを有し、わが国を狙えるようになった。

(4)日本へのミサイル攻撃に備えて警戒に当たっている米国のイージス艦が攻撃され、それを自衛隊の艦艇が守らなかったら、日米同盟はその瞬間、大きな危機を迎える。

(5)米艦船を守ることはわが国の存立と国民を守るために必要で、そのための集団的自衛権の行使はまさに必要最小限の中に入る。

(6)昭和34(1959)年、憲法の番人である最高裁判所は自衛権を国家固有の機能として当然だと認めた。

(7)日本国民を守るために必要な自衛のための措置とは何か、政治家が考えなければならない。

(8)40年前とは違う状況下で、昨年(2014年)、自衛権、集団的自衛権の解釈を変えた。それが平和安全法制だ。

 一連の説明を安倍氏は一切の資料を見ることなく、言葉が湧いてくるように行った。安倍氏の理解力と説明能力には、官僚や他の政治家を寄せつけないものがある。頭脳明晰な人である。

祖父である岸信介氏への思い

 安倍氏はその後、祖父、岸信介氏についても振り返った。

「祖父が『岸信介回顧録』で1960年の安保改定時のことを書いています。安保改定で徴兵制に逆戻りするとか、夫が戦場に行くことになるとか、戦争に巻き込まれるという批判があった、ありもしないことを批判されて残念だと祖父は書いています。55年経って、いま、全く同じ言論状況ですね」

 祖父と孫は日本がまともな国になるように法制度を整え、占領軍の急拵えの憲法のくびきから日本を解放しようとその一生を捧げた。日本国内では愚かな左翼勢力が岸氏の功績も安倍氏のそれも認めようとしないが、国際社会は安倍氏の貢献を高く評価している。安保法制に賛成の意を正式に表明した国々はアジア諸国を含めて50以上に上る。

 さらに、来日したカンボジアのフン・セン首相について安倍氏はこう語った。

「日本にPKO部隊を派遣していただいたお陰で、カンボジアはしっかり成長できた。いまは自分たちがPKO部隊を送り、スーダンで医療活動をしていると言っていただきました。PKOのときも菅直人氏らは非常に強く反対しましたね」

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