ヤクルトの「歴史的独走」を許したセ・リーグ5球団それぞれの“大誤算”

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秋山加入はプラスでも長打力不足の広島

 現在はAクラス争いを演じている広島はメジャーに移籍した鈴木誠也の穴を埋められていないことがやはり大きい。新外国人のマクブルームはまずまずの活躍を見せているが、大きな誤算なのは昨年10本塁打を放ってブレイクした林晃汰の低迷だ。

 開幕から二軍でもなかなか快音が聞かれず、打率は2割台前半に低迷している。同じ若手では小園海斗も守備面で成長が見られるものの、打撃面では調子の波が大きく安定した活躍を見せることはできていない。メジャーから日本球界に復帰した秋山翔吾の加入はプラスだが、長打力不足にはしばらく悩まされることになりそうだ。

 今季から立浪和義監督を迎えた中日は、若手の伸び悩みが目立つ。将来の主砲として期待された石川昂弥は怪我で長期離脱となり、根尾昂も投手転向となった。外野の岡林勇希がレギュラーに定着したのはプラスだが、それ以外は昨年とは代わり映えしないメンバーで、大島洋平や阿部寿樹など一部の選手を除き、軒並み成績を落としている。

 昨年のドラフトでチームに不足している長打力が持ち味の選手であるブライト健太、鵜飼航丞、福元悠真の3人を指名したが、いずれも一軍で戦力になるのは時間がかかるタイプであり、現在のチーム事情を考えると、楽しみよりも不安の方が大きいと言わざるを得ない。これに加えて、新外国人選手は未知数で、よほどの大型トレードなどを断行しない限り、残りのシーズンで上がり目は期待できないだろう。

「ミスタードラゴンズである立浪監督という“切り札”を出しても、球団が補強にあまりに消極的であることから、地元の名古屋では『親会社の中日新聞は、球団を売りに出すべきだ』というファンが増えています。今後も新聞産業は右肩下がりですし、80年代の南海ホークスのような暗黒時代が続く可能性もありますね。資金力があるIT企業などが球団を買ってくれるといいのですが、中日新聞がもっと経営的にジリ貧にならないと、なかなか実現しないでしょう。以前、楽天が創設する時にマーケティングデータを分析した際、球団経営で名古屋は魅力的だとし、本拠地の候補のひとつにあがるほど、野球熱がある土地柄なのですが……」(地元紙記者)

いずれもチーム事情は苦しい

 一方、昨年の最下位から巻き返しを狙うDeNAは、長年の課題である投手陣の弱さがやはり大きなネックとなっている。本来エースとなるべき今永昇太もノーヒット・ノーランこそ達成したものの、安定感を欠き、勝ち星を計算できる投手は不在の状況が続いている。

 リリーフでは、若手の伊勢大夢と入江大生が成長を見せ、トミー・ジョン手術から復活した田中健二朗もプラス材料だが、先発が試合を作れないケースが多く、ブルペンに負担がかかっているのも気がかりだ。

 ただ、広島、中日と比べて野手陣には、後半戦に向けて明るい材料があるのは救いだ。怪我で離脱していたオースティンが復帰に目途が立ち、調子を落としているソトも長打力は健在である。牧秀悟が2年目のジンクスを感じさせない活躍を見せ、佐野恵太も安定しているだけに、両外国人が本来の打撃を見せていれば、リーグでもトップクラスの打線となるはずだ。Aクラスは十分に狙える可能性はある。

 どの球団もここから浮上するには苦しいチーム事情と言えそうだが、ヤクルトも主力選手の相次ぐ新型コロナウィルス感染というアクシデントに見舞われている。セ・リーグの火を早々に消さないためにも、5球団が意地を見せてくれることを期待したい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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