感染爆発のコロナ“第7波” BA.5は「ワクチンが効かない」「肺で増殖しやすい」は本当か?

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「肺で増殖しやすい」は本当か?

 東京大学医科学研究所が発表した最新の研究では、BA.5が「肺で増殖しやすい可能性」も指摘されている。オミクロン株の「重症化しにくい」という特性が、BA.5には通用しない可能性が浮上したともいえるが、医学会での受け止め方は冷静なものだという。

「同研究は試験管内や動物実験などで“ウイルスが肺で増えやすい”といった結果が報告されたに過ぎず、人間でも同じ結果になるかは未知数の段階。現状ではBA.5が肺で増えやすいかどうかは“まだ明らかになっていない”というのが正確です。フランスの報告では、発症期間がBA.1の約4日よりBA.5は約7日と長くなっているため、咳や発熱などの症状を自認する人の割合が高くなることが指摘されています」(寺嶋氏)

 BA.5の流行先進国である欧米や南アフリカのレポートに目を通しても、BA.5で入院率や重症化率が高くなったという報告は現時点でないという。

 岸田首相は15日、「行動制限は考えていない」と表明し、その理由のひとつとして「重症者数や死亡者数が低い水準にある」ことを挙げた。

 厚労省によると、オミクロン株の重症化率は60歳以上で2.49%と、季節性インフルエンザの3倍超にのぼるが、59歳以下では0.03%。これはインフルエンザとほぼ変わらない水準だ。

死亡率0.1%以下

 死亡者数についても、

「今年1月~3月にかけての第6波時の感染者のうち、50歳未満の死亡率は0.1%以下でした。70歳以上に目を転じると死亡率は1%を超えましたが、第7波においてもこの数字が大きく跳ね上がることはないと見られています」(寺嶋氏)

 現在、東京都の病床使用率は35.8%(15日時点)、重症者に限った使用率は10.2%(同)だ。感染者の急増で今後、数値が上昇する可能性はあるが、これまでのように感染の急拡大と比例して医療逼迫が起こる兆しは見えていない。

「オミクロンに取って代わって以降、若い世代が重症化する割合は格段に低くなり、若者にとっては徐々に“普通の風邪”に近づきつつあります。一方で高齢者については依然、注意が必要です。第6波の死亡者の約9割は70代以上の高齢者でしたが、“コロナ死”にカウントされていないだけで、感染後に持病の基礎疾患が悪化して亡くなった高齢者は少なくありません。第6波まで経験したことで、私たちは具体的に“何を恐れるべきか”が明確になってきた。正しく恐れることが“最大の自己防衛”に繋がり得るのです」(寺嶋氏)

デイリー新潮編集部

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