大谷翔平の獲得球団に求められる覚悟とは 「二刀流」で球宴選出もトレードはいばらの道

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難題山積の大谷「DH起用」

 米大リーグ、エンゼルスの大谷翔平(28)がファン投票の指名打者(DH)部門で2年連続のオールスター戦(7月19日・ロサンゼルス)選出を果たした。6月8日~30日に実施された1次投票では、トップ通過のヨルダン・アルバレス(アストロズ)に55万票以上もリードされての2位だったが、7月8日までの最終投票で逆転した。さらに同10日の監督、選手間投票などでは投手でも選出。二刀流でメジャーの顔であることを改めて知らしめた格好だが、日米で取り沙汰されているトレードの成立となると、そう簡単ではないようだ。

 ファン投票の結果、大谷は球宴でのスタメンDHの座を手中にした。アルバレスは選手間投票などで救済的に選出されたが、プレーしても試合途中からとなる。MLBで取材する記者が今回の投票結果を、エンゼルスのチーム事情に重ね合わせる。

「公式戦のエンゼルスでも大谷がDHに入ることで、他選手でDHが使えなくなる。去年、大谷の活躍でプホルスは5月に戦力外になった。それだけでなく、例えば外野手のトラウトをDHで使う日を設けて、負担を軽くさせることもできなくなる。大谷は昨年から登板日前後もDHで出るようになったため、トラウトは2020年を最後にDHでの出場がない」

 大谷は昨季、外野守備に就くこともあったが、試合途中からで数えるほどだった。二刀流で投手と両立するため、打者は基本的にDHでの出場だった。結果は「46本塁打、100打点」と申し分ない成績で、最優秀DHに贈られる「エドガー・マルティネス賞」やDH部門でのシルバースラッガー賞に輝いた。

「毎年こういう成績を残していれば、大谷のDH起用に誰も文句は言えない。しかし、20年のように打率1割台の不振に陥るようだと、そうはいかなくなる。大谷より打てる打者でDHを使わなければ、チームに不協和音が生じかねない。実際に大谷は20年のシーズン中には一塁と外野で守備練習をしていた。打撃に専念するDHは他のポジションより求められる成績が高くなる」(同前)

 今季からナ・リーグにもDH制が導入され、大谷が二刀流でプレーできる球団は全球団に広がった。しかし当然、各チームには打撃だけに秀でたDHがいる。トレード候補に挙がったヤンキースには強打者ジャンカルロ・スタントンを筆頭に、アーロン・ジャッジら複数の選手でDHを活用している。大谷が移籍した球団は少なからず他の打者との併用に頭を悩ませることになる。

投手でもやりくり必須

 大谷は投手起用でも、やりくりを余儀なくされる。

 今季は中6日がメインで、中4日はゼロ、中5日でも3度、中7日以上空けたこともある。これも二刀流による負担の軽減のためで、5投手が中4日で回るローテーションが主流のメジャーでは登板間隔が長い。

 これでは大谷が先発陣入りしても、代わりに1人減らすことはできない可能性が高い上、全投手をオートマチックに中4日で回せなくなる。大谷が入ることでローテは変則的になり、中4日の規則的な登板間隔でリズムを作りたい投手などとは相容れない。

「エンゼルスのような先発投手が手薄なチームばかりではない。強豪チームほどローテーションを確立している。シーズン当初ならともかく、途中でこれを崩すことは他投手に抵抗感があるのではないか。登板数などでインセンティブ(出来高)を結んでいる投手は嫌がることもあると思う」(MLBの代理人)

 大谷が加入すれば、DHとともに、先発投手としてもチーム内の複数選手が絡む調整が必要となる。これは一筋縄ではいかない。

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