フランス当局が日本人妻に逮捕状発行で注目の”連れ去り”離婚訴訟 敗訴の夫側は「日本の司法に失望」

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 夫側の母国であるフランス司法当局が「実子を誘拐した」として日本人妻に逮捕状を出したことで注目を集めた離婚訴訟の判決公判が7月7日、東京家庭裁判所で開かれた。裁判所は妻側が訴えていたDVについては認定しなかったが、親権を妻に定める従来通りの判決を言い渡した。(ライター・上條まゆみ)

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フランス大使館職員も傍聴

「主文。原告と被告とを離婚する。原告と被告の間の長男および長女の親権者をいずれも母である原告と定める」

 東京家庭裁判所141号法廷。裁判長の判決言い渡しを、被告の在日フランス人のヴィンセント・フィショさんはみじろぎせず聞いていた。傍聴には、被告側の支援者やフランス大使館職員も駆けつけた。一方、妻側は弁護士も含めて欠席した。

 ヴィンセントさんは昨年の東京五輪期間中に国立競技場前で「連れ去り被害」を訴え、3週間のハンガーストライキを敢行したことで注目を浴びた。4年前、離婚問題について話し合いをしている最中、妻が黙って二人の子供を連れ去ってしまったというのがヴィンセントさん側の訴えだ。

 一方、妻側は夫によるDVから逃れるために仕方なく取った避難行動であったと主張。妻側が離婚を求めて起こした訴訟で、親権が争われていた。判決では親権は妻に定められたが、妻側が主張していたDVについては認められなかった。

 昨年11月、フランス司法当局が日本人妻に対して「未成年者拉致の罪」(未成年者略取及び誘拐)と「未成年者を危険にさらした罪」で逮捕状を発行したことでもより大きな注目を集めた今回の判決公判。判決後に司法記者クラブで開かれた会見には、「ル・フィガロ」「ル・モンド」などのフランス主要メディアも駆けつけた。

「子供たちも負けたのです」

 会見でヴィンセントさんは判決への不満をこう訴えた。

「裁判で負けたのは私だけではない。私の子供たちも負けたのです。子供たちは父親なしで生きていかなければならない。なぜ裁判所は、私がDVをしていないとしながらも『連れ去り』を見逃すのでしょうか。フランス政府が要請し、インターポール(国際刑事警察機構)から逮捕状も出ている妻に親権を認めるのか。納得できません。控訴して戦います」

 会見に同席した上野晃弁護士はこう述べた。

「今日、夫のDVはなかったと認められた。つまり、妻は理由もなく子供を連れ去ったことになる。にもかかわらず、子供の連れ去りについての評価はスルーされたのです。今、法制審議会で親権問題が議論されている中に、子供の連れ去り問題も入っています。裁判所がこの問題にまったく頓着しない判決を出したことに、私たちは大いに失望しています」

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