フランス当局が日本人妻に逮捕状発行で注目の”連れ去り”離婚訴訟 敗訴の夫側は「日本の司法に失望」

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離婚トラブルの温床と言われる「単独親権」

 離婚後のトラブルが絶えない温床になっているのが、日本の親権制度である。現状、日本は父母のどちらかが親権を持つ「単独親権」。世界の先進国のほとんどは、離婚後も子供の親権を父母がもつ「共同親権」。日本でもこの「共同親権」を導入すべきだという声が高まっている。

 親権というと、いかにも親の「権利」のようだが、親が果たすべき責任とも言える。離婚後も子どもが両親から経済的、精神的支援を受けながら育つことが子供の最善の利益につながるという考え方が「共同親権」を求める声の背景にある。1994年に日本も批准している「国連子どもの権利条約」には、「子供が父母と引き離されないことを確保する」と示されている。

 一方、共同親権になってしまうと、離婚をするほど仲の悪い両親の間に挟まれた子供が不利益を被る、あるいはDV親との縁が切れず子供が危険にさらされるという意見もある。故に、断固として共同親権に反対する声は大きい。

法制審議会で進む議論

 現在、法務省内の法制審議会家族法制部会において、父母の離婚後等の親権者に関する規律等についての議論が進んでおり、今夏に中間試案が公表される予定だ。部会資料によれば、中間試案では「共同親権」という文言は採用されているものの、選択的共同親権の採用や単独での監護権を認めており、「骨抜き」になる可能性が高い。そうなると、これまでと同様、別居親との親子断絶や監護権を有利とするための子どもの連れ去りは防げない。

 そこで立ち上がったのが、国内外の研究者や弁護士らでつくる民間団体だ。テレビ等でも活躍する北村晴男弁護士が部会長を務める。「法制審の案は、婚姻中の家族のあり方まで変更する恐れがある」として、独自に取りまとめた中間試案を自民党の高市早苗政調会長に提出した。団体側は、法制審の部会が発表する試案と団体側の試案を与党内で比較・審査したうえで、欧米諸国や韓国、台湾などが採用している離婚後の「共同親権・共同監護」制度を創設するよう求めた。

 離婚後の単独親権、それを発端とする子どもの連れ去りについては、諸外国からも強く非難されている。2020年にはEU議会が日本に対し「子の連れ去りに関する国際的なルールを遵守していないように見受けられる」と非難決議を表明している。

上條まゆみ(かみじょう・まゆみ) ライター。東京都生まれ。大学卒業後、会社員を経てライターとして活動。教育・保育・女性のライフスタイル等、幅広いテーマでインタビューやルポを手がける。近年は、結婚・離婚・再婚・子育て等、家族の問題にフォーカス。現代ビジネスで『子どものいる離婚』、サイゾーウーマンで『2回目だからこそのしあわせ~わたしたちの再婚物語』を連載中。

デイリー新潮編集部

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