香川照之だけじゃない「六本木クラス」がコケそうな3つの不安要素

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 竹内涼真主演のドラマ「六本木クラス」(テレビ朝日)が7月7日から放送開始される。その製作が発表されたとき、私の周囲の韓国ドラマファンは、とんでもなくザワついた。この作品が、2020年に韓国で放送され「第4次韓国ドラマブーム」をけん引した大ヒットドラマ「梨泰院クラス」のリメイクだからだ。【渥美志保/映画ライター】

男性を引き込んだ韓国ドラマ

「梨泰院クラス」は、ソウルの米軍基地がある町、梨泰院(イテウォン)を舞台に、居酒屋を開いた前科持ちの青年パク・セロイが、仲間とともに外食産業のトップを目指すサクセスストーリー。青春群像劇でもある。

 彼の前には大きな敵が立ちはだかっている。大手外食チェーン「長家(チャンガ)」の会長チャン・デヒである。チャン会長は、かつて自身の右腕だったセロイの父の死に、そしてセロイの前科にも関わりがある。つまりセロイの成功は、会長への復讐でもあるのだ。時に一歩一歩、時に大勝負をかけて、成功への階段を上ってゆくセロイ。自分を決して卑下せず正しいと信じる道をゆく彼の周囲に集まってきた「ハズレものたち」との絆、彼らを金と力でねじ伏せようとするチャン会長と、そのバカ息子グンウォンの憎々しさ、セロイとその右腕のチョ・イソ、セロイの幼馴染みでチャン会長の犬となったオ・スアの三角関係……この原稿を書くためにNetflixで見始めたら、もうすでに何度か見ているにもかかわらず、止まらなくなってしまった。まったくもって面白すぎる。

 韓国ドラマはこれまで「女性が見る恋愛もの」という色眼鏡で見られてきたが、「梨泰院クラス」はその偏見を覆し、多くの男性ファンを引き込んだ。。そんな作品を日本の地上波でリメイクするとは――このニュースを聞いた私の最初の感想は「やめときゃいいのに……」である。

(1)香川照之といえば、あのドラマの……

 原稿を書いているこの時点で、「六本木クラス」はまだ始まっていない。だからこの原稿が示すのは、あくまで危惧であるということを前提に話を進めたい。

 そもそも梨泰院と六本木は似ているようで全然違う町なのだが、これについては、「梨泰院クラス」の原作ウェブ漫画を翻訳する時点で「六本木クラス」になっちゃっているので、テレビの罪とばかりは言えない。また「長家」の売りは秘伝のヤンニョム(※辛い味噌調味料)を使ったキムチチゲなのだが、「六本木」では「牛筋煮込み」あたりになっちゃったりするんだろうかなど、ローカライズの微妙さも、問題の本質ではない。

 現時点で第一に危惧するのは配役――主人公の宮部新(パク・セロイ役に当たる)を竹内涼真が、敵役の長屋茂(チャン・デヒ役に当たる)を香川照之が演じるという点である。

 特に、香川照之の配役には軽くめまいさえ覚えた。予告編ではドラマ最大の悪役として「土下座をして、謝りなさい」と憎々しく言う香川照之に、頭の中であの特徴的な音楽が鳴り響いたのだ――こ、これは、大和田常務(ドラマ「半沢直樹」)では。

 大ヒットの功罪で、ただでさえ「大和田常務」として記号化されている香川照之にこの手の役を演じさせるのは、作り手がそれ(=大和田常務ショー)を期待しているからではないか。そして大和田常務が失脚する様、つまり土下座を作品の最大の目玉においているという意思表示に思える。

 予告の「巨大な敵に立ち向かう」というナレーションも、当初のティーザーにあった竹内涼真の「俺の復讐は20年がかりだ」というセリフ(というか、その言い回し)も気にかかる。ふたりの間には、オリジナルとは異なる旧態依然としたマウンティング合戦、テストステロンがむんむんに漂う「男vs男」の意地の張り合いがあり、「倍返しだ!」の世界に見えてしまう。誤解なきよう言っておきたいのは、これは決して俳優の罪ではない。キャスティングや演出を手掛ける作り手の、作品に対する理解の問題であり、そのうえで何を最も大事にすべきかという判断の問題だ。キャラクターの外見的な特徴を「梨泰院」に似せればそれですむ問題ではない。

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