香川照之だけじゃない「六本木クラス」がコケそうな3つの不安要素

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(3)18時間→10時間に出来るのか

 さて最後に、作品性とはまったく別の、テレビドラマの編成の問題も指摘しておきたい。これまでも多くの韓国ドラマが、日本の地上波ドラマとしてリメイクされている。

「ごめん、愛してる」(2017、主演・長瀬智也)、「魔王」(2008、主演・大野智)、「HOPE 期待ゼロの新入社員(オリジナルのタイトルは「未生 ミセン」)」(2016、主演・中島裕翔)などがそれで、どれもこれも韓国で大ヒットした作品だ。

 エンタテイメント作品における「面白い」という感覚は、日韓でそれほど大きなズレはなく、韓国で人気が出た作品は日本でもヒットする可能性は高い。ただしそれは元の作品を「そのまま」持ってきた場合――100歩譲って「ほぼそのまま同じもの」を作れた場合である。

 はっきり言えば、現在の日本の地上波で韓国ドラマを「ほぼそのまま同じもの」にリメイクすることは不可能だ。よく言われるスタッフや俳優のスキルの違いではなく、ドラマの編成の問題である。韓国ドラマ(「ミニシリーズ」と呼ばれるいわゆる連ドラ)では、各話の長さが1時間を超え、これを16回放送するのが通常だ。仮に1話が1時間10分なら全編で18時間を越える。

 一方、日本のドラマは1話が正味45分で全10~11回。11回放送だとしても、合計8時間ちょいである。18時間のドラマを8時間に収めるためには、いくつかのエピソードを大胆に省くか、物語を進めるために細部をすっ飛ばすしかない。つまりドラマそのものを「早送り」で見るような仕上がりか、もしくは本来のドラマを薄めたものになってしまう可能性が大きい。「六本木クラス」では特別に、初回は10分拡大で、話数は13回に増やすということがアナウンスされているが、それでも10時間程度だ。

 これはある意味では、日本で作られるマンガ原作の映画の多くが「違う」「面白くない」と言われてしまう要因によく似ているように思う。コミックで5、60巻、時に100巻を超える作品を2時間の映画にするのには、やはり原作のエピソードを切り貼りせねばならない。映画は原作の人気を当て込んでヒットを狙うわけだが、人気ゆえにファンたちの思い入れも強く、映画版の切り取り方によっては「作品のなんたるかを理解していない」と総スカンを食らう。つまるところリメイクする側が最も理解し、大事にしなければいけないのは、原作の「なんたるか」=エッセンスである。それさえきっちりと押さえれば、「最高!」と言ってもらえなかったとしても、「違う」「面白くない」という評価に終始することはなくなるに違いない。「六本木」がそれを理解し描いていることを、今は願うばかりである。

渥美志保(あつみ・しほ)
ライター、インタビュアー。エンタテイメントを中心に、映画レビュー、人物インタビュー、時事コラムなどをライティング。「mi-mollet」、「エル・オンライン」、「GINGER」、「COSMOPOLITAN」にて連載中。Yahoo!オーサー。「GOETHE」、「週刊現代」、「Nikkei LUXE」、「ELLE Japan」、「eclat」などの一般誌、企業広報誌など幅広い媒体にて執筆。関心事は映画、社会学、健康、政治、多様性、女性の生き方。

デイリー新潮編集部

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