ウクライナ侵攻“最大のナゾ” ロシア軍もウクライナ軍もなぜ制空権を取れないのか

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アメリカ軍との差

 ロシア軍も2月24日、ウクライナ全土に空爆を行った。ところが翌25日には、早くも陸上部隊が進軍を開始した。

「戦果判定に1週間をかけたアメリカ軍とは、あまりにも対照的です。そのためウクライナ軍のレーダー施設や地対空ミサイルは、かなり生き残ったようです。アメリカ軍のように、徹底してウクライナ全土を何度も空爆すれば、航空優勢を確保し、制空権も確立した可能性は高かったのではないでしょうか」(同・軍事ジャーナリスト)

 ロシア空軍は、なぜ空爆を徹底して行わなかったのか──どうやら「行わなかった」のではなく、「行えなかった」のかもしれないという。

「アメリカ軍のように大規模な空爆を行うには、極めて緻密な作戦計画が必要なのです。多数の軍用機を多数の目的地に向かわせ、空爆を行い、戻ってきた機体は整備する。山手線を秒単位で運行させるようなもので、アメリカ軍は高性能のコンピューターを使って空爆計画を立てます。ロシア軍に、ここまでの能力はないでしょう」(同・軍事ジャーナリスト)

戦線は膠着

 徹底した空爆を行わなかったため、航空優勢を確立できなかった。そのためロシア空軍の軍用機やヘリは、多数が撃墜されてしまったという。

「生き残った地対空ミサイルや、アメリカ軍が供与した携帯式防空ミサイルシステム(MANPADS)が、ロシア空軍に相当な被害を与えたと分析されています。更に今では、ポーランド国境を早期警戒管制機(AWACS)が飛び、ロシアの航空基地を監視しています。ロシア軍機の動きは丸裸になっており、これもロシア軍が及び腰な理由でしょう」(同・軍事ジャーナリスト)

 かくして、ウクライナ軍もロシア軍も、地上部隊だけが激戦を繰り広げるという、まるで第一次世界大戦のような状態となってしまったのだ。

「今、軍事専門家の多くは、戦線の膠着を指摘しています。NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長は、侵攻が何年も続く可能性を指摘しました。今後も両軍は、航空優勢を掌握できないと考えられます。となると、事務総長の指摘が現実のものになってしまうでしょう」(同・軍事ジャーナリスト)

註:飛行禁止区域設定と戦闘機要請 米議会でゼレンスキー氏(共同通信・3月16日)

デイリー新潮編集部

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