ウクライナ侵攻“最大のナゾ” ロシア軍もウクライナ軍もなぜ制空権を取れないのか

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 3月16日、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領(44)は、アメリカ議会でオンライン演説を行った。その際、《ウクライナ上空の飛行禁止区域設定や、戦闘機などの提供を米国に求めた》(註)ことをご記憶の方も多いだろう。

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 だが、ゼレンスキー大統領の悲痛な叫びは一蹴された。アメリカ側の《ロシアとの交戦に発展しかねないと否定》する態度は、今も変わらない。榴弾(りゅうだん)砲は渡すが、戦闘機や攻撃機は供与しない、というわけだ。

 SNSでは「もし西側諸国がウクライナを戦闘機や攻撃機で支援すれば、戦況は絶対に変わるだろう」という声が少なくない。ここではTwitterの投稿から、1つだけご紹介しよう。

《NATOが空爆すれば、ポパスナもイジュームも容易に奪還できる。ロシア軍は全域から敗走するだろう》

 ある軍事ジャーナリストは、「現実の政治を無視し、軍事的な観点のみで考えれば、ネット上の指摘通りです」と言う。

「仮にNATO(北大西洋条約機構)軍が“多国籍空軍”を編成し、ウクライナの東部や南部戦線でロシア軍の地上部隊を攻撃すれば、戦況が一変するのは間違いありません。ロシア軍をウクライナの領土から完全に追い出し、ロシアが実効支配しているドンバスやクリミアを奪還することも夢物語ではないでしょう」

ロシアの巡航ミサイル

 実際のところ、“多国籍空軍”は荒唐無稽な話ではある。ならば、より現実的なシナリオを想定してみよう。

「アメリカはウクライナに対し何度も、ロシアによる侵攻の可能性を警告していました。そのため、実際にロシア軍が攻撃を開始すると、ウクライナ空軍機はかなりの機数を退避することに成功したのです。残ったウクライナ空軍に隣国ポーランドの空軍が協力し、ロシア軍を攻撃したらどうなるでしょうか」(同・軍事ジャーナリスト)

 こちらの場合も、ロシア軍に相当な被害が出るのは間違いない。だが、怒り狂ったロシアがポーランドを攻撃する可能性も高くなる。

 なぜNATO側は、ロシアに対し腰が引けているのか。「ロシアの核攻撃を恐れているからだ」という指摘は多い。

 だが、「ロシアが通常兵器で攻撃することも充分に考えられます」(同・軍事ジャーナリスト)という。

「ロシア軍は巡航ミサイルを使って、ウクライナを攻撃しています。このミサイルは射程距離が3000キロを超えるものがあり、ポーランド国内を狙うことも可能なのです。もしポーランド空軍の攻撃機がロシアの戦車を破壊したら、ロシアが航空基地をミサイルで報復攻撃してもおかしくないでしょう」

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