ウクライナ侵攻“最大のナゾ” ロシア軍もウクライナ軍もなぜ制空権を取れないのか

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ヘリも駄目?

 ポーランド側に被害が出たら、ロシアに対して反撃するかもしれない。何より、ポーランドはNATO加盟国だ。集団的自衛権を発動する必要も出てくる。

「あっという間にウクライナの戦火が東欧に飛び火し、アメリカ軍がロシア軍を攻撃する必要まで生じてしまいます。アメリカだけでなく他のNATO加盟国にとっても、最悪のシナリオであることは言うまでもありません」(同・軍事ジャーナリスト)

 戦闘機や攻撃機でロシア軍と戦うことが無理なら、対戦車ヘリコプターの供与はどうだろうか。

 AFP通信の日本語ニュースサイト「AFPBB News」は4月14日、「米、ウクライナに追加軍事支援 ヘリや火砲も」の記事を配信した。

 記事タイトルにある通り、アメリカはヘリコプターを供与している。だが、自国のものではないのだ。

 記事ではアメリカ国防省が公開した支援リストを報じている。そこに《ヘリコプター「Mi17」11機》とある。これは旧ソ連が開発したものだ。

「ウクライナ空軍のパイロットは、旧ソ連の軍用機しか操縦できません。もしアメリカがウクライナに対戦車ヘリ『AH-64 アパッチ』を供与したとして、運用できれば多大な戦果を挙げられるでしょう。しかし、ウクライナ空軍のパイロットがアパッチを操縦できるようになるためには、相当な時間が必要です」(同・軍事ジャーナリスト)

“珍しい”戦争

 こうした背景があるため、どれだけウクライナ軍が東部と南部の戦線で苦戦していても、NATOは陸戦兵器の供与しか行わないわけだ。

 制空権という用語がある。「敵軍機の航空脅威を完全に取り除き、自軍機で制圧した状態」と定義されている。

 だが、戦争でこんな状態になることは珍しい。そのため最近は、「航空優勢」という用語が使われる。

 上に見てきた理由で、ウクライナは制空権も航空優勢も掌握していない。だが、ロシア軍も全く同じ状態だ。

 ある意味でウクライナ侵攻は、攻める側も守る側も航空優勢が掌握できていないという珍しい戦争となっている。なぜ、このようなことが起きたのか、前出の軍事ジャーナリストは「ロシア軍は侵攻当初、作戦が非常に杜撰でした」と言う。

「アメリカ軍は湾岸戦争でもイラク戦争でも、全土に猛烈な空爆を行いました。その上、1週間ほどをかけて、入念な戦果判定を行ったのです。生き残っているレーダー施設がないか、対空ミサイルが隠されていないか、徹底的に調査しました。撃ち漏らしがあれば、更に空爆を行ったのです。こうして、敵軍のレーダー網や航空基地、地上部隊を徹底して無力化しました」(同・軍事ジャーナリスト)

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