コロナが作った「つまらない人生」 これまでの「時代の進化」と大きく違うポイントとは(中川淳一郎)

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 2020年以降、「ニューノーマル(以下NN)」「新しい生活様式」という言葉が何度も取り沙汰されました。具体的にはマスクの常時着用、店に入る時はアルコール消毒、リモートワーク、給食は「黙食」、ソーシャルディスタンス維持、時差通勤、不要不急の外出自粛、親が死にそうな時も面会不可、葬式も少人数で、イベントでは人数制限、マスクをして拍手のみで応援、といったところでしょうか。

 それにしてもつまらねぇ人生!! なんじゃ、コレ(笑)。

 しかし、我々は常にNNな人生を送ってきたのではないでしょうか。2008年以降、スマホが普及してから完全にそうです。電車の中の風景は以前はガラケーを見ている人が時々いて、雑誌や書籍や新聞を読んでいる人はそこそこいた。しかし今やほぼ全員がスマホの画面を見ている。決済もQRコードで行い、LINEなど無料で通話ができるようになるほか、不倫の証拠もメッセンジャーのやり取りから時系列で簡単に暴くことができるようになった。

 瓶ジュースが主流だった時代は、酒屋へ瓶を返しに行き、お金をもらっていました。しかし、缶ジュースが主流になるとそこら辺にポイポイ捨てるようになり、ジュースは一度に全部飲むものへ。だから250ミリリットルや350ミリリットルが多かったのですが、ペットボトルが主流になると、いつまでも少しずつ飲めるため500ミリリットルが増えた。他にもNNには以下のようなものがありました。

「公衆電話→携帯電話」「固定電話は不要」「日本人プロ選手は日本国内でプレー→海外にも進出」「エロ本→エロビデオ→エロネット画像」「テレビを決まった時間に見る→VHSで保存→HDDで保存→オンデマンド放送で見る」「改札の切符切り→自動改札→電子カード」「電車内では喫煙可→禁煙→ありとあらゆる場所で禁煙」「ゲーム好きは不良→ゲームは皆のもの」

 これらはいずれも便利になったわけですが、明らかにコロナをめぐるNNは人間的な生活にただ制限を与え、つまらなくしただけです。まぁ、NNやりたい人はお上や専門家が言う通りにすればいい。こちらはそんな人生、まっぴらです。しかし、これまでNNだの新しい生活様式だのとは言わずに、「時代の進化」「より便利な社会」などと言われていました。

 NNはむしろ冷戦後の世界のありようを意味するNWO(New World Order)における陰謀論に近いかな、とも思います。世界トップのエリートによる管理社会、の意味ですね。私はこの陰謀論を信じませんが、実際コロナにおける陰謀論的NNはキチンと実現できた。かつて西アフリカの奴隷は土や作物を食べないようマスクを着けさせられましたが、これは支配層による強制です。今の日本も同じですよね。マスクをしていないと移動も施設利用もできないし、学校でも常時装着が要求された。

 しかし、陰謀論型NWOは海外では脱却できたのに、支配層になれない日本にだけNNが根付き続けているのは皮肉です。そんなこの2年の社会時評を書いた新刊『よくも言ってくれたよな』(新潮新書)発売です、どうぞよろしくお願いいたします。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ。ネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』等。

まんきつ
1975(昭和50)年埼玉県生まれ。日本大学藝術学部卒。ブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」で注目を浴び、漫画家、イラストレーターとして活躍。著書に『アル中ワンダーランド』(扶桑社)『ハルモヤさん』(新潮社)など。

週刊新潮 2022年6月30日号掲載

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