深刻な兵員不足に143兆円の“巨額負債” ウクライナ侵攻から4カ月で露呈した「プーチン」自滅の末路

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自軍同士で撃ち合うロシア部隊

 ロシア政治が専門の筑波大学名誉教授の中村逸郎氏が話す。

「仮に大規模な徴兵や予備役招集をかけても拒否する者が続出する事態が予想されているのです。ロシア国内では5月頃から、戦況をストレートに伝える報道が目立ち始め、侵攻当初の“ロシア軍の快進撃”や“ウクライナのナチ討伐”といったプロパガンダを額面通りに信じる国民は少なくなってきています」

 中村氏によれば、前出のセベロドネツクでも、前線の兵士が上官の命令通りに動かないケースなどが報告されており、制圧の障害になっているという。

「セベロドネツクだけでなく、東部戦線では命令を拒否した前線兵士が自軍の上官らと戦闘を繰り広げた事例も報告されています。軍隊ではあり得ない事態ですが、背景にあるのは、ロシア兵の間に“この侵攻に大義はない”といった空気が蔓延しつつあることです」(中村氏)

 統制のタガが外れ始めたロシア軍の士気の低下は、戦争が長引くほど顕著になると見られている。

150兆円近くの復興費用

 さらに今後、戦場にとどまらず、ロシア国家を破綻に導きかねない問題も待ち受ける。

「先日、欧州投資銀行がウクライナの復興に要する支援額が、現時点で日本円にして約143兆円にのぼると試算しました。これは昨年のロシアのGDPの6割超に当たる数字。こんな巨額の資金を、経済制裁がボディブローのように効きつつあるロシアが捻出できるはずもありません」(中村氏)

 つまり、仮にロシアがウクライナの東部地方などを制圧しても、兵力だけでなく、財政面からも「併合」や「占領」など実質的にできないことを示唆しているという。

 戦争の行く末を見据えた“不安”の吐露はプーチン政権の高官からも出始めた。

「6月初旬、プーチン大統領の側近のひとりであるセルゲイ・キリエンコ大統領府第1副長官が政府機関紙『イズベスチヤ』に“ウクライナの復興はロシア国民の義務。しかし、そのためにはロシア国民の生活水準は下がることになる”との趣旨の談話を寄稿したのですが、わずか数時間後に削除された。プーチン政権に対する“警告”との説も流れましたが、真偽は不明のまま。ただし、戦争の先に“本当の勝利”はないことをプーチン政権内でも理解している人間がいるということです」(中村氏)

“自滅戦争”へと邁進する狂気の「プーチン帝国」に崩壊の足音が迫っている。

デイリー新潮編集部

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