プーチンを震えあがらせる“高機動ロケット砲システム”「ハイマース」本当の実力

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「シン・ゴジラ」にも登場

 戦車を遠くから攻撃できる兵器としては、榴弾(りゅうだん)砲も有名だ。NATO軍はウクライナ軍に、多くの榴弾砲を供与している。ロシア軍の戦車が多数、撃破されたという報道に接した方も多いだろう。

「NATO軍の155ミリ榴弾砲なら40キロ先の目標を砲撃できます。一方MLRSからは無誘導のロケット弾の他に、ATACMS(陸軍戦術ミサイルシステム)という、射程300キロの精密誘導ミサイルを発射できます。弾頭にはBAT(対装甲子爆弾)が複数詰め込まれ、この子爆弾も地上の装甲車両を認識しピンポイントで車両を破壊します。もちろん、ATACMSはHIMARSからも発射できます」(同・軍事ジャーナリスト)

 つまり“安全地帯”から、敵の戦車や装甲車に甚大な被害を与えるのが、MLRSやHIMARSの目的というわけだ。

 どれくらい離れた場所から発射されるのか、よく理解できる日本映画がある。2016年に公開された「シン・ゴジラ」[庵野秀明総監督(62)、東宝]だ。

「ゴジラが神奈川県川崎市の武蔵小杉付近に現れると、自衛隊はMLRSでロケットを静岡県御殿場市から発射、ゴジラに命中させるシーンがあります。しかし、実はこれでも直線距離で約70キロに過ぎません。武蔵小杉から300キロなら、三重県の四日市市あたりが約280キロです」

軽量のHIMARS

 三重県から神奈川県の敵軍をピンポイント攻撃できるというわけだ。これだけでも性能の高さがよく分かる。

 MLRSの威力を実戦の戦果として世界に知らしめたのは、1991年の湾岸戦争だったという。

「アメリカ軍とイギリス軍が約200台のMLRSを投入し、遠距離からロケットを一斉発射しました。降り注いだ子爆弾の威力は凄まじく、イラク軍は『スチール・レイン(鋼鉄の雨)』と呼んで恐れたというエピソードが残されています。またMLRSの威力に脅え、かなりのイラク軍兵士が投降したとも言われています」(同・軍事ジャーナリスト)

 ところが、MLRSには欠点が1つある。自走式とはいえ重量が24・7トンもあり、空輸にはC17グローブマスターなどの大型輸送機が必要なのだ。

「そこで、約13・7トンと軽量化したHIMARSを開発したのです。小回りのきくC130輸送機で世界中どこへでも緊急展開が可能です。その利点を活かすため、アメリカ軍は海兵隊など緊急展開する必要のある部隊に配備しています。激戦が続くウクライナの場合も同じで、MLRSよりHIMARSのほうが展開しやすいでしょう」(同・軍事ジャーナリスト)

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