プーチンを震えあがらせる“高機動ロケット砲システム”「ハイマース」本当の実力

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BM-30の破壊力

 BM-30はローテク兵器のため、めったやたらにロケットを撃つことしかできない。だが、今の戦況には有利に働いているという。

「なぜMLRSやHIMARSはハイテク兵器で、ピンポイント攻撃が可能なのかと言えば、誤射を少なくするためです。間違って民間人を攻撃してしまうと、国際社会はアメリカ軍を強く非難します。“正義”というイメージを重視するアメリカ軍にとっては、できる限り誤射は避けたいわけです」(同・軍事ジャーナリスト)

 だが、今のウクライナ情勢で“誤射”を防ぐ必要は、どれだけあるのか。MLRSやHIMARSはハイテク兵器だけあり、操作方法は複雑で、習熟には少なくとも数週間が必要だという。

「結局、HIMARSをウクライナに届けることができても、すぐに使えるわけではありません」(同・軍事ジャーナリスト)

 一方のロシア軍は、誤射など全く気にしない。国際社会から非難されても、もはや開き直って無差別攻撃を行っている。

 BM-30を操作するためには、研修など必要ない。民間人の犠牲も無視し、ひたすらロケット弾を猛射して破壊し尽くす。倫理的には大問題なのだが、相当な戦果を挙げているのも事実だろう。

“ゲームチェンジャー”ではない!?

 そもそもウクライナ軍は兵力で劣勢だ。兵士1人の戦死が与えるダメージは、ロシア軍より遥かに大きい。ロシア軍の無差別攻撃にウクライナ軍が苦しめられている理由の1つだと言える。

「ウクライナ軍の限りある兵員から担当兵を割いて研修を受けさせ、実戦配備が可能になったHIMARSは、これ以上ないというほど貴重な戦力です。しかし、射程距離80キロに制限され、90〜70キロのBM-30と向かい合わなければなりません。おまけに安全地帯で使うことが前提条件なので、防御力も弱いのです。ウクライナ軍が最前線の配備を躊躇したとしても不思議ではないくらいでしょう」(同・軍事ジャーナリスト)

 ネット上では「HIMARSが最前線に投入されれば、ロシア軍を撃退できる」という投稿も目立つが、あまりにも楽観的すぎるようだ。

「ウクライナ軍も過大な期待はせず、何とかHIMARSでロシア軍を押し戻そうと考えているのかもしれません。実際、クラスター弾の威力は期待できます。ロシアもウクライナもクラスター弾の禁止条約は批准していません。ただ、HIMARSでも戦況を一変させるだけの戦果は得られないでしょう」(同・軍事ジャーナリスト)

デイリー新潮編集部

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