筋トレブームの火付け役が「1日15分しかしない」理由 60歳までに筋トレを始めるべき?

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意外と大切な“下ろす”動作

 また、「上げる」ことだけに力点を置きがちですが、下ろす動作をおろそかにするのはよくありません。上げるとともに「しっかり下ろす」ことも重要です。

 例えばバーベルを50センチ上げると、筋肉に強い負荷を与えると同時に、上に上げる分の多くのエネルギーを消費することで乳酸を溜め込み、筋肉が張る刺激を生み出します。そして下げることで、50センチの高さから床に落下させた場合の衝撃分のエネルギーを筋肉で受け止める。その結果、筋肉が微細に損傷し、これも筋肉を大きくする重要な負荷となります。つまり、「上げる」と「下ろす」では筋肉への負荷の種類が異なり、両方の刺激を与えることで筋トレの効果はより高まるのです。上げることのほうが達成感が得やすいかもしれませんが、同じく下ろすことも意識し、速やかに上げ、2秒くらいかけて丁寧に下ろすのが筋トレのスタンダードです。

 また、意識することなくストンと下ろすと、その衝撃を筋肉ではなく関節で受け止めてしまうことになります。せっかくの落下のエネルギーを、関節に与えて筋肉を肥大化させるために使わないなんて、なんともったいないことでしょう。その上、落下の衝撃は関節に掛かり、けがのリスクが増してしまいます。

 例えば、先ほども触れた、下まで勢いよくしゃがんだ反動で上がってくるスクワットでは、しゃがんだ時に膝が曲がり切って靭帯に強い負荷が掛かり、筋トレ効果が下がるばかりでなく、けがする危険性も高まってしまいます。

「100歳からも歩く」

 これまでの注意点を踏まえた上で適切な筋トレを始めましょうと言われても、年寄りには無理……。そう思われている方がいるとしたら、答えは断然「ノー」です。高齢者の筋トレ効果を示す研究はいろいろとあり、60~72歳の方が脚の高負荷筋トレを週3回、3カ月間行った結果、脚の筋肉が平均11%も肥大したという報告もあります。この値は若い世代とさほど変わりがない。つまり、手遅れということはないのです。

 筋肉は非常に適応能力が高い組織です。一般的に「老化(の程度)を抑えられる」という言い方をしますが、筋肉に限って言えば、老化の速度を緩やかにさせ、老化を抑えられるだけでなく、適切に鍛えれば成長させ、「若返らせる」ことができます。何歳からでも筋肉は強くできるのです。年齢を理由に筋トレしないなんて、これまたこんなにもったいない話はありません。

〈いいんです、今からでもやっていいんです〉

 そして、せっかく筋トレを始めるのであれば、人生100年時代を迎えている今、目標は高く、「100歳まで歩く」ではなく「100歳からも歩く」に置きたいところです。そのためには、まず筋肉における「80歳の壁」を乗り越えることを意識してみるのはどうでしょうか。

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