原因はコロナか、ワクチンか 今年に入って「日本人の死亡数」が激増している理由

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ワクチンとの関連は薄い

 東京歯科大学市川総合病院(呼吸器内科部長)の寺嶋毅教授はこう話す。

「ワクチンの接種が最も多かったのは、今年よりも昨年8月前後です。ワクチンとの間に因果関係があれば、当時も死亡者が増えていないと不自然ですが、そうはなっていない。またワクチンの副反応に関しても3回目接種は2回目までとおおむね同程度という報告が多い」

 事実、6月10日に公表された「厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会」の資料にはこうある。

 ワクチン接種が本格化した昨年2月から今年5月15日時点までで、「副反応が疑われる」ケースにおいて死亡事例として報告された数は、ファイザー製で1575件、モデルナ製で149件。うち、3回目接種後の死亡事例はファイザー製134件、モデルナ製78件と、増加分の死亡者数には遠く及ばない。

 ただし、ワクチンは関係なくとも、急増の背景に「コロナ関連死が相応に含まれている可能性」は払拭できないという。

統計上、見えてこない「コロナ関連死」

「コロナ禍が間接・直接的に影響していると考えるのが自然です。例えば、第6波では救急患者の受け入れ先がすぐに決まらない救急搬送困難事例の件数が第5波時を上回りました。つまり適切なタイミングで適切な治療を受けられなかった救急患者が増加したのです」(寺嶋氏)

 さらに感染者の急増で「受診控え」が常態化したのも影響した可能性があるという。

「糖尿病や高血圧、心疾患などの持病を持っている高齢者が感染を恐れて病院から足が遠のき、薬を飲む頻度が減ったなどの事例が報告されています。もともと寒い時期には、心疾患系の基礎疾患を持つ患者の死亡が増える傾向にありますが、今回は受診控えによる症状悪化などの要因も重なったと見られます」(寺嶋氏)

 前述の通り、第6波の死亡者の9割は70代以上の高齢者で、当然、感染者に占める高齢者の割合も同様に高い水準にあった。

「コロナで死に至らずとも、感染後に持病の基礎疾患が悪化し、亡くなった高齢者も少なくありません。その際、死因は心不全や肺炎などと記載されることになるので、統計上、コロナと無関係の死亡扱いになります」(寺嶋氏)

 厚労省はじめ専門部会による、今後の検証が待たれる。

デイリー新潮編集部

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