中日・根尾昂“投手転向”で鮮明になった「立浪独裁」と「球団の構造的問題」

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外野手、ショートを経て投手という“たらい回し”

 セ・パ交流戦が終わり、上位と下位の差が徐々に開いてきた今年のプロ野球だが、ここへ来て大きなニュースが飛び込んできた。交流戦終了時点でセ・リーグ最下位に沈む中日の立浪和義監督が、根尾昂の“投手転向”を明らかにしたのだ。【西尾典文/野球ライター】

 今シーズンの根尾の成績は、26試合に出場して8安打、0本塁打、打率.211と苦しい状況が続いており、投手として登板した2試合ではいずれも150キロをマークするなど高い能力を見せていたことが転向に繋がったと考えられる。だが、気になるのがその決定に至るまでのプロセスではないだろうか。

 立浪監督は、就任直後の昨年秋に根尾を外野手に専念させることを決定し、実際、シーズン前に登録も外野手となっている。しかしシーズン開幕後の4月には再びショートへ戻り、このタイミングで投手へと転向。これだけ短いスパンでコンバートを繰り返していることに対して、ファンから戸惑いの声があがっている。

 なぜ、悪く言えば“たらい回し”のような状況に陥ったのか。中日を取材する、地元テレビ局のスポーツ担当が、この背景を解説する。

「今回の決定は立浪監督によるものだと言われており、落合(英二)ヘッド兼投手コーチもキャンプ中から、投手転向の可能性は探るように言われていたものの、自分が進言したものではないと明言しています。これだけ大きな決定にヘッドコーチが関わっていないというのは驚きですよね。先日の中村紀洋・打撃コーチが二軍に配置転換された件も、立浪監督の独断と言われており、周りに何かを進言できる人がいないのが現状のようです」

 これでは、立浪監督の“独裁”と言われて仕方がない、チーム内部のギスギスした様子が伝わってくるような話だが……。問題はそれだけにとどまらないようだ。

ドラフトの誤算

「ただ、監督だけに責任があるのではありません。中日は、去年のドラフト会議で、根尾と年齢の近い大学生の外野手を3人も指名しています。そのことに驚いたと、立浪監督は話しています。監督が就任したのは、ドラフト会議後だったので仕方ない部分もありますが、根尾を外野手で勝負させようと考えていた立浪監督にとっては、誤算だったことは間違いないでしょう。チームは下位に沈みながら、編成と現場で上手くコミュニケーションがとれていないことも問題ではないでしょうか」

 立浪監督は就任時に「打つ方は必ず何とかします」と話していたが、昨年に比べてチーム打率は向上したものの、得点はリーグ最下位と相変わらずの貧打に悩んでいる。

 この言葉は当然、根尾だけに向けられたものではないが、これだけ大きなことを言っておきながら、期待の若手野手をわずか半年で見切って、投手に転向させるというのは、やはり違和感を覚えずにはいられない。根尾に限らず、将来のチームの中心として期待してドラフト上位で獲得した選手、特に野手がことごとく躓いているのには、チームとしての構造的な問題があると言わざるを得ないだろう。

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