中日・根尾昂“投手転向”で鮮明になった「立浪独裁」と「球団の構造的問題」

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根尾の逆襲はあるか

 そんな中でも救いと言えるのは、根尾が投手としても高い才能を持っているという点だ。高校時代の根尾のプレーを多く見てきた他球団のスカウトは投手としての根尾について、以下のように話してくれた。

「中学時代から145キロくらいのスピードを投げていたので、元々速いボールを投げるという能力に関しては抜群のものがありました。変化球も縦のスライダーが良かったですね。ピッチャーとしても十分にプロ入りできるだけの選手だったと思います。あと特に目立っていたのが、マウンドさばきですね。ピンチの場面で全く動揺した様子を見せることがありませんでしたし、落ち着いて投げることができる。(史上初の)選抜で2年続けて優勝投手になったのも、そういう面が優れていたからだと思います。プロでは3年間野手として練習していたわけですから当然、時間はかかるでしょうが、こういったメンタル面の強さは大きな武器になるんじゃないですかね。個人的には、抑えとか面白いと思っています」(他球団の関西地区担当スカウト)

 このスカウトも話すように、根尾は甲子園でも度々好投を見せており、3年春の選抜高校野球の決勝では先発を任されて2失点完投勝利もマークしている。また、夏の甲子園の後に行われたU18アジア選手権でもリリーフとして好投し、国際舞台でもその実力を如何なく発揮した。重要な場面で力を発揮できるというのは、やはり投手として大きな魅力と言えるだろう。

 冒頭でも触れたように今回の決定について困惑するファンの声は多いが、その一方で投手・根尾に期待する声があることも確かである。行き当たりばったりの球団、首脳陣の中でもその才能を腐らせることなく、投手として一流になることができるのか。根尾の逆襲に期待したい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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