「AV新法」成立 天使もえが語る「出演者の救済、他にやるべきことが」

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脱ぐのはOKでも変顔はNG

【一部の女権団体からは、法案の骨子が出たのちに「AV撮影で性行為をすることが禁止されていない」「本番行為のあるAVの禁止に踏み切るべき」といった主張があった】

 これは私も多少偏見が入ってしまっているのかもしれませんが、私の中でこれはフェミニストの方々の中でずっと議論されているセックスについての価値観の論争に巻き込まれたのかなというようにも感じてしまっています。

 本番行為や作品内で携わる行為全般について規制してほしいということが女の子の中から湧き上がった声であるなら、それは尊重しなくてはいけないことだと思いますが、全くの外部からそれは必要ないと言われても、それはこの新法の話が出たことを機にいよいよ性行為が悪であるという価値観を押し付けようとしているようにも感じてしまっています。

「テレビや映画の殺人シーンで実際に人は殺さない」と、殺人と同列で語っている方もいましたが、感情的になって、苛烈にヒートアップしている印象です。

 私は、アクション映画にも出演するんですけど、アクション映画を実際に劇場で見たら、観客の目には危険な行為だと伝わるじゃないですか。でもそういうシーンは、体を動かしながら練習をして撮影し、スタッフは一歩引いて、絶対安全なように撮影するわけですよ。

 AVも同じで、全て本番行為がなされているように聞こえますが、それは違うんです。そういう風に見える演技の工夫をすることがあるわけです。やっていないと言われると、また違うと思うんですが――そう“見えるように”やっているということもあるわけです。実際、映像を見たら、100%やっているか、というのはわからないはずです。自分の頭のなかで補填して想像しているに過ぎないのです。一部の団体には、性行為を無理矢理させられている、という思い込みがあるように思います。でも、それは違います。実際には、撮影の数日前に撮影の流れの説明を受けて、嫌なシーン、表現がないか聞かれます。本番当日にも意志確認をしています。今年でデビューして、丸8年になりますが、今でもちゃんとその確認は絶対にします。ポジティブにAVの仕事をしたいという人が、自分の意思で自由に仕事が出来る方が良い。

 私は、自分の中で、したい事、したくない事を整理した上で仕事をしています。

 例えば、カメラの前で脱ぐことに抵抗はないんですよ。でも、変顔をしてくださいと言われたら出来ません。それはその人自身の価値観であり判断になりますよね。体を張って頑張る姿を応援してくれるファンも1人や2人じゃなく、たくさんいるので、そういう方達の存在も無視して欲しく無いと思います。

業界そのものへの懸念

 厳しい制限を設けられることによって、“間口”が狭くなることのデメリットもありますよね。実際、“AV女優”としてデビューしなくても、AVに関わりたいとか、今すぐお金が欲しいという女の子は、適正AV業界ではなく、裏のアングラな仕事に参加してしまうのではないでしょうか。だから禁止や制約は、業界衰退にも繋がりますよね。禁止されるような法律が施行されてしまえば、業界の全ての人間が不利益を被ります。DVDを売る店舗もそうだし、この業界で働く人々、ポジティブに仕事をしている女優の収入が減ることにもなります。そういう可能性の議論もして欲しいです。

 私は、この業界が無かったら、自分はどうなってただろう、と思うことが多いです。業界が無かったら、今より嫌な人生だったかもしれないと思うことの方が多いです。

 漫画じゃ無いですけど、楽しんで、一緒に作品を作っていける仲間を見つけられたということが私にとってはとても大きいです。外から見ると、スタッフと女優の立場が加害者と被害者の関係に思えてしまうのかも知れませんが、スタッフは一緒に作品を作り上げる喜びを共有出来るパートナーだと私は思っています。

 そんな風に考えている人間もいるのだということを知って欲しいです。

デイリー新潮編集部

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