4月期ドラマ「ベスト3」 それでも「マイファミリー」に感じた“2つの疑問”とは

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 プライム帯(午後7時~同11時)に15本あった4月期ドラマがほぼ終わった。全体の特徴はミステリーの多さ。5作もあった。観る側が推理に参加できるミステリーは動画配信と相性が良い。動画配信事業に本腰を入れている各局の姿勢が表れた。15本の中からベスト3を選んでみたい。

「正直不動産」(NHK)

 ドラマの良し悪しを決めるのは「1に脚本、2に役者、3に演出」。国内外を問わず、これを否定する制作者はいない。このドラマも脚本がしっかりしていた。

 書いたのは日本テレビ「ハコヅメ~たたかう!交番女子~」(2021年)と同じ根本ノンジ氏(53)。「ハコヅメ」も「正直不動産」もコミカル部分とシリアス部分のバランスが良く、業界知識が盛りこまれていたところが一緒だった。

 主人公は山下智久(37)が演じた「登坂不動産」の営業マン・永瀬財地。息を吐くようにウソをつく困った男で、客を騙して物件の売買や賃貸の契約を結んでいた。客を泣かせた分、売り上げはナンバーワン。高額の歩合給が目当てで働いていたのだ。

 ところが、祟りによってバカ正直になってしまったことから、苦難が続く。礼金ほしさに入居者を次々と追い出していたアパート経営者の松崎(宮川一朗太)は「このクソオーナー!」と面罵。利益至上主義の不動産オーナーのマダム(大地真央)には「そんなに金を稼ぎたいのなら、あの貸店舗で風俗でもやればいいじゃないですか」と言い放ってしまう。もちろん2人とも怒り心頭。永瀬はピンチに立たされ続けるものの、観る側には愉快だった。

 けれど徐々に正直であることがプラスになり始める。客に信頼されるようになった。それが少しずつ売り上げにも結びついていく。

 私生活も変わった。取引先の銀行員・榎本美波(泉里香)から「私と結婚を前提にお付き合いしてもらえませんか」と告げられる。永瀬の正直なところが美波を惹き付けた。

 正直が災いすることは多かったが、悪いことばかりではなかった。永瀬の日々はむしろウソつき時代より充実する。客に感謝されるようになったからだ。大人向けの寓話のようで示唆に富んでいた。

 また、名称は知っているものの、中身はよく分からなかった不動産用語もなんとなく理解できた。「サブリース(不動産会社がオーナーからアパートをまるごと借り上げ、それを入居者へ貸す形態)」などである。好奇心を満たしてくれるドラマでもあった。

 最終回、永瀬の祟りは神社での祈祷によって消える。永瀬は再びウソをつき始め、売り上げを急伸させた。だが、表情は冴えなかった。

「ひとつもうれしくない。むしろお客さまに対して、後ろめたさを感じる」(永瀬)

 結局、永瀬は自分の意思で正直に生きることを決める。カネのためではなく、客の幸せを願って働くことにした。

 観る側にも「どう生きるのか」「なぜ働くのか」を問い掛けるドラマだった。

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