防衛費5兆円増でも…自衛隊員から「財務省に殺される」という悲鳴が上がる現実

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「空自15分全滅説」

 表面的には無傷でも、細かな破片が電子機器やエンジンを破壊してしまうこともあるという。

「航空自衛隊の現場からは『贅沢は言わない。破片の飛散から機体を守れるぐらいの強度でいいから、全機が収納できる掩体壕を整備してほしい』という要望が多いのです。何しろ1発のミサイルで、基地の全機が使い物にならなくなる危険性があるわけです。航空戦を戦う前に敗北という、『空自15分全滅説』は以前から指摘されてきました」(同・軍事ジャーナリスト)

 世界中どこでも、軍隊の「基本教練」では小銃の取り扱いを学ぶ。陸軍だけでなく、海軍でも空軍でも必須だ。

 陸上自衛隊では現在、最新型である20式小銃の配備が始まった。ところが、予算の関係から一斉に導入されるわけではないという。

「本来は一括購入したほうが単価は安くなります。ところが、防衛費には上限があるので、一斉に20式小銃に切り替えると予算超過となってしまう。そのため、何年もかけて順次、新式の小銃を配備していきます。実際、1世代前の89式小銃も、まだまだこの先も長く使い続けられますし、一部の現場では更に古い64式小銃も現役です」(同・軍事ジャーナリスト)

現場は常に物不足

「64」という数字は、1964(昭和39)年に開発されたことを意味する。こんな古い銃が未だに使われているのだ。

 いや、時代遅れの小銃が使われているだけではない。迷彩服や軍靴でさえ、全員分が充分に揃っているわけではないという。

「『隊員の制服や靴も、実は足りていません。予算が増えるなら、こうした個人貸与品の整備に使ってほしい』という意見もかなりの数にのぼりました。物品不足の北朝鮮を笑うことはできません」(同・軍事ジャーナリスト)

 小銃の話に戻れば、駐屯地にある「銃の格納スペース=銃架」にも問題があるという。

「一部の駐屯地では、小銃だけに合わせたサイズの銃架を使っています。そのせいで、例えば光学照準器を装着したままでは、銃架に収まらないのです。正確に調整して取り付けた照準器を片付けるたびに外すなど、常識では考えられないことです。『予算が増えるなら銃架を何とかしてほしい』という現場からの要望もありました。裏を返せば、財務省の厳しい予算査定だと、銃の格納場所も満足に改造できないというわけです」(同・軍事ジャーナリスト)

 いかにも財務省が好みそうな「アウトソーシング(外部発注)による経費削減」の行きすぎにも、現場は不安視しているという。

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