巨人「ポスト坂本」の一番手……中山礼都が高校時代に木製バットで見せた“驚くべき将来性”

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「合同練習会」で注目度が急上昇

 プロのスカウト陣からも当然、早くから注目を集めていた中山だが、プロからの評価を大きく上げたのは、3年夏の愛知県独自大会が終わった後に行われた「プロ志望高校生合同練習会」と言われている。

 特に目を引いたのが、初日に行われたフリーバッティングだ。木製バットで参加していた多くの選手が苦しむ中で、中山は右方向へも左方向へも鋭いライナーを連発。大げさではなく、高校生の中に一人だけ大学生か社会人の選手が混ざっているように見えたのだ。

 高校時代の中山について、他球団のスカウトに聞いたところ、やはりこの練習会での話が出てきた。

「下級生の頃から試合に出ていたので見る機会は多かったですし、当然マークしていた選手でした。ただ、走攻守三拍子揃っているものの、何かがずば抜けているわけではなかったです。体もそこまで大きくないので、プロでは苦労するかなと思って見ていました。ただ、甲子園での練習会でのバッティングは抜群でしたね。木製バットは金属よりも反発力が弱いので、どうしても力んでミスショットが多くなるのですが、中山は軽々とさばくように打っていました。『こんなバッティングができるのか』と驚いたのを覚えています。後で聞いた話では、練習会に合わせてかなり練習していたそうで、そういう貪欲にアピールする姿勢もいいですよね。ドラフト3位という高い順位で指名されましたけど、それも納得でした」(他球団の東海地区担当スカウト)

 ちなみに、2020年のドラフト会議で、中山はドラフト3位のなかでトップ、全体では25番目で指名されており、高校生の内野手では最も早く名前を呼ばれたことになる。やはり、練習会でのアピールが奏功したことは間違いないだろう。

球際に強く、ミートの感覚もいい

 そして、中山はプロ入り後も高い順応性を見せる。ルーキーイヤーの昨年は、肋骨の骨折で出遅れたものの、夏場には二軍のレギュラーに定着。9、10月度のファーム月間MVPを受賞している。

 育成選手を多く抱える巨人では、高校卒1年目の選手が二軍で出場するのも簡単なことではない。そこで結果を残したからこそ、坂本の離脱によって一軍から中山に声がかかったと言えるだろう。

 他球団の編成関係者も、その能力の高さを認めている。

「去年から二軍でのプレーをよく見ていますが、まず堂々としているのがいいですよね。物おじするところがないというか、地に足がついているように見えます。凄く華麗なプレーをするというわけではないですが、どんな形でもアウトにできる。球際が強いですよね。打つ方はまだまだパワーはありませんけど、ミートの感覚がいい。1年目であれだけ二軍でできるのは立派です。一軍にも慣れてきているみたいですし、坂本が戻ってくるまでは、原辰徳監督も使い続けるんじゃないですかね」(他球団のプロスカウト)

 坂本も1年目から二軍で結果を残し、2年目に当時ショートのレギュラーだった二岡智宏の怪我もあって一軍に定着している。中山もここまでは同じルートを歩んでいる。

 坂本の実力を考えると、このままレギュラーを奪うのは簡単なことではないが、「ポスト坂本」の一番手という認識をチームの内外にアピールできたことは確かだ。20歳の若武者が、このまま次代の巨人を担う存在になることができるのか、今後のプレーぶりに注目だ。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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